辺境の異種格闘技。ACC賞「ブランデッド・コミュニケーション部門 」審査委員座談会<Part2>


参加者

菅野薫さん
電通 CDC、Dentsu Lab Tokyo/
エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、クリエーティブ・テクノロジスト

尾上永晃さん
電通/プランナー

嶋浩一郎さん
博報堂ケトル/代表取締役社長

東畑幸多さん
電通/グループクリエーティブ・ディレクター、CMプランナー

橋田和明さん
博報堂ケトル/クリエイティブディレクター

左から嶋さん、東畑さん、菅野さん、尾上さん、橋田さん。

ACC賞のインタラクティブ部門が、新しく菅野薫氏を審査委員長に迎え「ブランデッド・コミュニケーション部門」と新たな名称、新たなカテゴリーに生まれ変わりました。これから審査にあたってどのような観点で作品を見ていくのか。全2回の座談会のうち、前回は「D:デザイン」カテゴリーについて、今回は「A:デジタル・エクスペリエンス」「B:プロモーション/アクティベーション」「C:PR」の3カテゴリーについて掘り下げます。これまで褒められてこなかった辺境地帯から、何が生まれ、見出されるのか?

すべてのイノベーションは辺境から生まれる。

菅野薫さん

菅野:「ブランデッド・コミュニケーション」って、思わずそれっぽい響きの部門名にしたのですが、実際のところ「その他の広告」です。フィルム部門、ラジオCM部門以外全部。広告の素晴らしい仕事で、まだ褒められていない部分も扱いますという感じです。

嶋:そのコンセプト、最高にいいと思います。「その他」ってところが最高ですよ。「その他の広告」大好きですよ。
全てのイノベーションは辺境から生まれてきて、最初はみんな「その他」なんですよ。だから、その他の広告が集まるこの部門は一番おもしろい作品が集まるに違いないって勝手に予測しています。
自分はずっと「その他」扱いだったんですよ。「本屋大賞」を書店員のみんなとつくったとき、出版市場が動いているのに広告専門誌は取り上げてくれなかったんですよ。「その他」だったから。

菅野:えー、「その他だから」という理由おもしろいですね。

嶋:だから、僕は“その他応援団”ですよ。日本のメディア環境って特殊で、他の国と比較するととてつもなくマスメディアが強力だった。だって、購読者1000万の新聞はあるし、キー局で視聴率20%とったら2千万人が見ているんですよ。そのコンテンツを。そりゃ、企業がコミュニケーションしようと思ったらそのメディアに広告載せるよね。まあ、そうなりますよ。だから、その他の広告のことをあんまり考えなくてよかったんですよ。

東畑:「その他」って言い換えると、嶋さんが好きな「あさって」ですよね。ACCは今まで「きょう」とか「あした」の広告を評価してきたけど。ゲームチェンジするような新しいアイデアは、今日とか明日の延長じゃなくて、「あさって」の方向からやってきたりする。「あさっての広告」をみんなが考える機会になるといいなと。今までACCに全く関係なかった人に対して、みんな応募出来るんだということを、強く言っておいたほうがいいですよね。

尾上永晃さん

尾上:この部門のごった煮な感じや、「見つけようとしているんだぞ」という姿勢が伝わると出しやすくなるんだろうな、という気がします。そういう姿勢の賞ってないですもんね、なかなか。辺境の人は他の立派な賞に対して、「立派な人たちに、立派な感じで褒められるんだろうな、褒められ方の道筋が決まっているんだろうな」と思って敬遠したりしていると思うんで(笑)。僕がそうだったので…

嶋:ミリオンセラーを売る装置をつくっても、広告業界の人は褒めてくれない。でもね、そこがバネになったりもするんですよ。「その他の人」として頑張ってやるって。

尾上:コンプレックスと怒りが、一番のモチベーションです。(笑)

橋田:「その他の人」っていうの、心がザワザワします。

嶋:東畑さんが今日のメンバーの中では、広告のど真ん中をやりつつ、そこから幅広くいろいろ手を延ばすとうスタイルですよね。

東畑:すごいしゃべりづらいな、とさっきから思っていました。「そういう気持ちお前には分からないだろ」と思われているのではないかと。

一同:

東畑:今までACCの真ん中にいた人も、本音では焦っていると思う。私だけかな?ソーシャルメディアの発達って、大きくはマイノリティが力を持ち、逆にマジョリティが力を失っていく流れだと思っていて。逆に今マジョリティの孤独や不安が、どんどん生まれてきている。「その他」が世の中をざわつかせたり、新しい反応を生み出していることは、みんな感じていると思う。

尾上:すごいムカついているやつが獲るといいですね。嫉妬してるやつとか。僕、常に腹立ってたんですけど、そういう「ざまぁみろってなるやつが優勝すると「そそるぜ!」って感じですね。

橋田:プロモーションとかアクティベーション起点に発想している若手、すごくグツグツしている。なんか、グツグツ…(笑)。だから、この部門、本当にうれしいと思う。素直に。

菅野:若手のエンカレッジになるといいな、と思ったんです。

橋田:なると思います。

次ページ 「新しいアイデアに、新しい褒め方を見つける。」へ続く

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