ブルーノートと蔦屋書店にみるブランド価値の再編集

本屋≠本を売る施設 =文化やライフスタイル、生き方を提案する空間へと再編集した蔦屋書店

全国で書店が激減する中、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が新形態の大型書店をオープンさせたことで話題になった蔦屋書店。2011年、代官山に誕生した最初の旗艦店は、今でも毎日大勢のお客さんでにぎわっていますし、昨年2017年の銀座のGINZA SIXにオープンしたアート専門の店舗も銀座の新しい文化発信地としてトレンドスポット化しています。

運営元の公式サイトによれば、代官山の蔦屋書店についてこんな説明をしています。

代官山 蔦屋書店は、「書店」と名乗りながらも、本を売るためだけの施設ではありません。本や音楽、映画が揃っていますが、そこで過ごす「時間」を楽しんでいただけるような空間を目指しています。
そうした代官山 蔦屋書店の精神を引き継ぎ、全国に蔦屋書店が広がっていきます。

CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の公式サイトより

これは本屋という場所を再編集したことのステートメントだと言ってもいいでしょう。本屋を、「モノ」としての本を売っている場所ではなく、知らない世界や知識とのワクワクする出会いがある場であるとその本質的な価値を定義されたのではないでしょうか。ですから、本だけではなく音楽や映画、ファッションなど様々な切り口で私たちに文化やスタイル、生き方を提案してくれる空間になっています。

書店の減少が問題視され始めたころから、従来の本屋さんとは異なるスタイルで本を売る個性的な書店がたくさん誕生してきました。そうした中で、CCCは個性派書店とは違った大きなスケールで資本を投下し、代官山 蔦屋書店の精神を受け継いだ書店をいくつもオープンさせました。さらにその後、再編集した「書店」の空間を生かし、T-SITEという生活提案型の商業施設で街づくりまで手掛け、更にTポイントでの新たな経済圏までを構築しています。CCCの取り組みは、これからの人々の行動や価値観を変えてしまう可能性すら秘めているのではと思います。

CCCは単に「本を売る」ということだけでなく、時間や体験価値を提供することでブランドを再編集している: chat9780 / 123RF 写真素材

次ページ 「「ブランド価値の再編集」とは、新しい世代との未来の関係づくり」へ続く

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藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

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