突然、巻き起こった「ネットと通信一本化」の報道
3月15日に共同通信がこんな記事を配信しました。
もうひとつ、同じく共同通信が3月22日にこんな記事も出しています。
これを読んだ時、私は「はあああ?」と困惑しました。なんでそんな話になるの?そもそも、ここに書かれている「改革案」はちっとも現実的ではありません。
とくに「放送という制度を事実上なくし、インターネット通信の規制と一本化して、ネット動画配信サービスなどと民放テレビ局を同列に扱い、新規参入を促す構えだ」というのは、いつを想定しているかは書かれていませんでしたが、現状では到底無理です。
それに具体的にどうしたいのかもわからない。民放をもう電波を使わせずに通信で届けるようにするの?じゃあみんなテレビをネットに繋ぐの?FireTV経由じゃないと日テレの番組見られないの?そんなことしたら、日本中のお年寄りが「笑点が見れんじゃろうが!」「ワイドショーだけが楽しみじゃのにぃ!」と大混乱に陥ってテレビ局を焼き打ちしちゃうよ。なんてことしてくれたんだと、政権が崩壊するよ。無茶苦茶だなあ。私の感想はそんなところでした。
だからこんなキテレツな案、葬り去られるに違いないよ。誰が作ったのか知らないけど。私はそう思いましたが、マスコミ界は騒然となった。とくに新聞社がはっきりスクラムを組んで猛批判しました。ただ新聞社が批判するのは、現実性のなさではない。「放送法4条撤廃はけしからん!」という趣旨でした。ほぼそこだけ。
これがまた私には、奇妙に映りました。放送法4条とは、放送局に政治的公平性を求める条文で、これまで何度か政治サイドから「公平に扱ってないよ!」と介入される根拠になっていたものです。ある時は、「4条に反していると電波を停める可能性はある」と総務相が発言したとかでも騒ぎになりました。放送局としては目の上のたんこぶじゃないかと思っていたのに、新聞社は一斉に「4条を撤廃するとアメリカのように偏った放送局だらけになる!撤廃は許すまじ!」と政権批判を繰り広げた。
これまで放送法4条はむしろ「言論の自由を阻害する」要因だったし、そう報じてきたマスメディア側がなぜ撤廃となると「必要だ」となるのかわかりませんでした。逆にそれはいい!と、自主的ルールでやっていく体制に持っていかないの?と不思議でした。政府に介入の口実を与える法律をなんでそんなに守りたいのかなあ。
そしてまた「アメリカのようになる!」というのもおかしいなと思いました。アメリカが80年代にフェアネスドクトリンを外して政治的公平性を問う法的規制をやめたのは事実です。でも、だからって「偏った放送局だらけになる!」ってのはどれくらい調べて言っているのかと疑問でした。確かにFOXニュースは偏っていると言われてます。でも他の放送局までが「偏った局だらけ」って違うでしょう。それに失礼ですよ。はっきり言いますが、これを言う人は調べてなさ過ぎです。
まあカンタンに言うと新聞社が一斉に感情的になったようにしか見えませんでした。そしてそれは損するんだけどなあと心配しました。感情的に調べが薄い主張を展開すると逆に「偏った報道」になってしまいます。ミイラ取りがミイラになるようなことを新聞社が言ってしまっていたわけです。またマスゴミ扱いされちゃいますよ。
そして4月半ばに「規制改革推進会議」の報告が出てくるので、その中でこの放送法改革案が盛り込まれるはずだ!と噂されていました。さらに、盛り込まれるがトーンダウンするらしい、とも聞こえてきました。どちらにせよ、私が感じたのは「それはおかしくないかなあ。
だって「規制改革推進会議」は電波の割当が出発点だから4条云々は関係ないはず。他の要素も含めて、あの会議がこれまで議論してきた内容とかけ離れすぎている。もしこれで規制改革推進会議が放送法改革案をトーンダウンでも入れてきたら、とんでもない詐欺師集団ってことになるなあ」ということでした。これまでの流れから離れすぎておる。
4月16日に、「規制改革推進会議」が首相官邸で行われ、議論の方針が発表されました。トーンダウンどころか、噂された放送法改革案の片鱗はどこにもその中にはありませんでした。
なーんだ、やっぱりそうなんだ。規制改革推進会議ではていねいな議事録や記者たちとの問答も入った会見内容を文字にして発表しています。それによると、会議の議長・大田弘子氏や投資等ワーキンググループの座長・原英史氏は報道されたような改革案はまったく議論にあがってこなかったと関係を否定しました。私の見方では、そのほうが辻褄が合います。