神話構造をマーケティングプランに応用できるか?
このような考え方の元になっている神話構造の分析としては、ジョーゼフ・キャンベル氏の『千の顔を持つ英雄』が有名ですが、実際にブランドのストーリーに当てはめる方法としては、ジョナ・サックス氏の『ストーリー・ウォーズ-マーケティング界の新たなる希望』という本に詳しいです。
このような方法はジョナ・サックス氏以外にもエージェンシーのプランニングには活用されているようで、実際に自社のブランド定義の際にこうしたワークショップに参加したことがあります。そこでは自社ブランドを商品特徴やベネフィットのような機能にこだわらずに、より広い文化的な文脈で自社の性格や社会的意味合いを議論することになり、なかなか面白い体験でした。
しかし同時にブランドを中心とした神話というのは、ブランディングの内省的なインサイトの発見には役に立つのですが、マーケティングプランにそのまま使用するのにはやや抽象度が高過ぎて難しいとも感じました。サックス氏の方法もかなり複雑な構造なので、なかなかつくり上げるのも理解するのも簡単ではありません。
また仮につくり上げることができたとしても、その有用性や正しさそのものを即座に検証もできません。なぜならそのようにして生まれた「神話」は、自社ブランドで語られている意味を概念化したことによって手に入るので、具体的なマーケティングアイデアに結び付けることが目的ではないからです。