2、ブランデッド・ソーシャルグッド (Branded Social Good)
もう1つの手法の進化は、ソーシャルグッドの進化です。
世の中(ソーシャル)にとっていいことは当然で、それがさらにブランドに付加価値をもたらしている「ブランデッド・ソーシャルグッド(Branded Social Good)」という視点を感じるものが上位に多く残っていました。
◾️Black Supermarket
ヨーロッパ最大手のスーパーチェーン「Carrefour(カルフール)」が、EUの法律に対して意義を唱えるロビイング型キャンペーン。農作物の種の種類があまりにも制限されており、それが農家の負担になっていることを危惧し、法律的には禁止されている種でつくった農作物(もちろん普通に食べられるし、むしろその地域の伝統的なもの)だけを店頭に並べた。多様な種類の作物を認めようという社会性に加えて、農家の味方であるという自社ブランド価値を高める効果も。
(ゴールド、シルバー、ブロンズなど複数受賞)
◾️ START YOUR IMPOSSIBLE ※PRゴールド
オリンピック・パラリンピックのスポンサーであるトヨタが実施したグローバルキャンペーン。身体障がいを持つアスリートを主役にしたキャンペーンの総体が評価されたのですが、このキャンペーンの魅力を引き上げたのはアワードムービーの冒頭45秒のメッセージにありました。
「トヨタは世界一の自動車メーカー。でもこれからは単なる自動車の会社ではなく、モビリティ・カンパニーになる。なぜなら、トヨタはすべての人が平等に『移動する権利』を手にしていると信じているから。私たちのチャレンジはそのムーブメントを起こすこと。これはトヨタにとってはじめてのグローバルキャンペーンであり、オリンピック・パラリンピックという舞台での新しいチャレンジ。」
このメッセージと洗練された映像があったことで、キャンペーン全体がBrandedなものだと強調され、他の企業ではなくトヨタが今の時代にオリンピック・パラリンピックに協賛する意義と、パラリンピアンを主役にしたキャンペーンを行うAuthenticity(信憑性)を証明し、ソーシャルプロジェクトとして高い評価を得たのだと思います。
アワードムービーによって施策の価値を一気に高めた「オープニングの45秒」でした。
ご紹介した、「スマート・ハッキング」や「ブランデッド・ソーシャルグッド」という2つの手法は新しくパワーもあるため、一見日本では難しそうに思われます。でも実は今年の日本の応募作の中でも近いアイデアはいくつもありました。
にも関わらず、それらはショートリストにも残らず散ってしまいました。
一体その理由はどこにあったのでしょうか?