出演する女優は全員“すっぴん”だった
澤本:『万引き家族』で女の子の歯が抜けたのも・・・。
リリー:あれも自然に、しかも本番中に歯が抜けたんですよ。「歯が抜けたー」と言って撮影が止まったんですけど、「お前すごいな」と。樹木希林はその役をやるために歯を抜いたことがあるけど、本番中に抜くアプローチはおまえだけだと。
一同:(笑)
リリー:歯が抜けたところを是枝さんが見て、おばあちゃんが亡くなるときに再生と死があって良いかもと。歯が抜けたところを映画にしようと、その日のうちに歯医者に歯がある状態のマウスピースをつくってもらって、その後も歯がないけど、歯があるところは撮ってるんですよ。
澤本:歯が抜けたという話が効いてるなと思っていて。
リリー:すごいですよね。子どもは撮影してる間に歯が抜けたり、背が伸びたりするんですよ(笑)。だから、顔合わせのときと2人は全然違うんですよ。身長も。
権八:そういう時間的な、1年通しての変節というか。樹木さん自身も、見ると入れ歯抜いてお芝居してるじゃないですか。
リリー:そうなんですよね。今回、女優さん全員すっぴんなんですよ。すっぴんで出る女優さんも素晴らしいし。子役の女優は自分で歯を抜き、樹木希林さんは入れ歯自体を外したという。
一同:(笑)
リリー:アプローチとしては一番みんながシンプルなところにたどりつこうとしてるんじゃないですかね。
権八:希林さんが髪の毛を伸ばしてるのも。
リリー:希林さんがこの役をやるためにわざと髪の毛を伸ばしてたんですよ。「髪の毛が長いばあさんって気持ち悪くない?」とずっと言っていて。だから、みかん1つ、ぜんざい1つ食べるにしても不気味じゃないですか。
澤本:気持ち悪いです(笑)。
リリー:今回気持ち悪くいきたかったらしいんですよ。そのために髪を伸ばして。
権八:実際、気持ち悪いですよね。みかん食べるシーン、歯茎でむにゃむにゃするじゃないですか。
リリー:松岡茉優ちゃんと甘味屋にいるシーンも、餅が噛めないから、餅をねぶるんですよ。ねぶって食い切れないのを、よそ見してる茉優ちゃんのみつまめに入れて。
一同:(笑)
リリー:そういう家族どうしの気持ち悪さってあるじゃないですか。おばあちゃんと一緒に寝てる子の妹もそうだし、妹が残した餅を食っちゃってたり。家族ならではで成立してるけど、よそから見たら気持ち悪いことってあるじゃない。それは今回、ディテールとしていっぱい入っていて。だから、さっき言っていた雨の日の僕とサクラちゃんのラブシーンでも、サクラちゃんに話したのは、「とにかく平成で一番気持ち悪いラブシーンにしよう」と。
中村:(笑)。あれは気持ちも乗ってくるというか?