ドキュメンタリーを見せるような装置をつくった
リリー:何が恥ずかしいって、まぁまぁ全裸じゃないですか。俺のお尻の真後ろにカメラがあるんですよ。
中村:アキラ100%ぐらいの、ほぼ全部見えていたと。
リリー:他人の家のお母さんが握ったおにぎりを食べられない人もいるじゃないですか。だから、友達の両親のセックスを垣間見たら気持ち悪いと思うんですよ。その気持ち悪さが映画に出ればいいなと思って。
権八:いろいろな家族の情報量がものすごいですよね。
リリー:改めてこの撮影をしてるときに、家族って意外とすごい情報量の中でみんなが共存してるんだなと思って。今回も是枝さんは、それぞれの性も描きたいと言ってたんですよ。だから、夫婦間の性だったり、松岡茉優ちゃんだったり。
権八:JK見学の店ですよね。
リリー:教育のことでも、性のことでも、姿勢も、食も、お金も、家族というこの器の情報量はすごいんだなと。
澤本:よくこんなにいろいろな家族を、いろいろな側面から描けるなと思って。映画は2時間ぐらいでしたよね。
リリー:台本では130何シーンまであったから、普通の台本のシーン数よりも多いんですよ。それ全部撮影してるんですけど、これはこれは2時間以上になるだろうなと。是枝さんもなるかもしれないなと言っていて、最終的に2時間ジャストになって。だから、どれぐらい切ったシーンがあるかということなんですけど(笑)。
見たときビックリしました。是枝さんは映画と映画を見る人を信じてるなと。説明的で、こうであったらわかりやすいというところは全部切っていて。こうしたら泣くというところはトゥーマッチと感じたと切っちゃったり。
完成披露が結構前で、カンヌに行って、パルムドールをいただいて、もう公開されてるようなお祭り感があって。カンヌから帰ってきたら新聞5紙一面とか、なかなかないことじゃないですか。でも、公開前に盛り上がって、公開のときにみんなが飽きてるんじゃないかと。
一同:(笑)
権八:そんなことないですよ。
リリー:先ほど、是枝さんがドキュメンタリー出身という話がありましたけど、『万引き家族』はフィルムで撮ったドキュメンタリー番組を見ているみたいな感じがするじゃないですか。タイトルのロゴもちゃんとしたロゴがあるのに、冒頭では味気ない、何でもないフォントで出して。
権八:あれ、ビックリしました。
リリー:是枝さんはそれを意識してるんですって。ドキュメンタリー番組を見せるような装置をつくっていると。俺、ビックリして。これ仕上がりなのかなと。
権八:僕もちょっとビックリしました。試写用なのかなと(笑)。
リリー:写植のバラ打ちを貼っただけみたいなね。
<後編へつづく>
構成・文:廣田喜昭