『東京タワー』は「これ、誰が読むんだろう」と思いながら書いていた(ゲスト:リリー・フランキー)【後編】

ラジオが人との出会いをつくった

リリー:出してきますけど、ほぼほぼ落として(笑)。リスナーのハガキを何でもかんでも読んでたら、ハガキの質が下がるじゃないですか。俺は元SMAPの慎吾ちゃんと草彅くんのラジオの初期の構成作家を6年ぐらいやってたんですよ。今でもそのラジオ番組は続いているから25、26年ですね。

権八:そうなんだ!

リリー:当時はバリバリのアイドルだから、来るハガキが「大好きです」「超かっこいい」ばかりなんですよ。なかなか、選びにくい。でもせっかくハガキをくれるリスナーがいて、「前髪1ミリ切りすぎました、髪の短い女は嫌いですか?」という、取るに足らないハガキをどう消化しようかと考えて。それでコーナー名を付けたんですけど、そのコーナーも今でも続いてるんですよ。それは「どうでもいい話」というコーナーです。

一同:(笑)

リリー:「どうでもいい話」のコーナーとしてだったら、どうでもいい話が面白く聞こえるじゃないですか。「はい、どうでもいい話のコーナーです」と言うと、「うわー、どうでもいい」と言えるから。20数年間、そのコーナーが続いていて、今はその番組を俺の後輩が引き継いで構成してるんですけど、今や年末には「どうでもいい大賞」を発表するぐらい成長してるんです。そうすると、リスナーがどうでもいい話をちゃんと狙って書けるようになっていくんですよ。

澤本:なるほど、成長して。

中村:この番組「すぐおわ」は214回目なんですけど、当初いろいろ企画をやってみたんですけど、わりとどれも長続きせず、最後に残ったのが初めの20秒自己紹介という。

リリー:一番なくなるべきものだけが残った。

一同:(笑)

リリー:福山雅治くんと友達になったのも、ラジオがきっかけでしたから。

澤本:福山くんのラジオですか?

リリー:いえ、俺のラジオで。ラジオ番組の聴取率を調べるレイティング週間ってあるじゃないですか。でも俺の番組は深夜2時ですから、来てくれるゲストが杉作J太郎しかいないんですよ。

一同:(笑)

リリー:一番逆のことを言うという意味で、番組の中で「福山雅治とかゲストに来ないのかね」と、福山くんと知り合いでもないのに言ってたのを福山くんが移動中の車で聞いてくれてたんですよ。それで局に連絡があって、次の週にゲストに来てくれたんです。それが初対面で、2回目がその2週間後ぐらいに雑誌『anan』の抱かれたい男特集で、俺が福山くんを撮るカメラマンとして行って。だから会ったこともなかった人を急にラジオが近づけてくれて。ラジオは人と仲良くなれますよね。

澤本:それはすごくそう思います。

リリー:前に伊武雅刀さんがやっていた頃の『JET STREAM』で、矢沢永吉さんの特集を3夜連続でやったんです。そのドラマ部分を俺が書かせてもらったんですけど、矢沢さんも演者として出てきてくれて。それすごくないですか?

澤本:すごいです。

リリー:これはラジオドラマじゃないとできないやり方なんだけど、永ちゃんが明日アメリカに行っちゃうけどドラマの脚本ができてない、でも永ちゃんのセリフだけはもう貰いにいかないといけないと。まだ全く話を決めてないのに、俺は「永ちゃんが言ったら一番面白い言葉って何かな」とずっと考えて、その言葉から物語をつくることにしたんです。それで、俺が書いた1行だけのセリフが、「これ、君の牛?」という。

一同:(笑)

リリー:矢沢さんは真面目だから、収録されたものを聞いたら、「はい、いきます。これ、君の牛?・・・今のニュアンスがちょっと違うから、もう1回いきます」って、誰もそのニュアンスが正解かわからないものを何回もチャレンジしてくれるんですよ。結局、10何テイク入れてくれていて。

権八:面白い(笑)。

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