登録者数が1万人超にも及んだ、シカゴで開催された「Connections」
6月に米・シカゴで開催された、セールスフォース・ドットコム社主催のイベント「Connections」に参加をした、音部大輔さんによるレポートです。
2018年6月12日から14日に米・シカゴで開催された、セールスフォース・ドットコム社が主催するイベント「Connections」。本イベントは、セールスフォース・ドットコム社のサービスを体感することを目的に開催され、これまでの内容を変更し、拡大して2年ぶりに実施。筆者は「マーケティング・オートメーションの今後」や「マーケティング活動の設計図(グランドデザイン)をどのように描くべきか」などの関心を持って、本イベントに参加をした。
まず、私が「Connections」で観察し、考察したことをレポートする前に、「Connections」について解説しておきたいと思う。
6月12日~14日の3日間のイベントでは全558セッションに参加登録者は1万人超にも及んだ。顧客中心の各クラウドの連携、GDPR、セールスフォース・ドットコム社がそれまで各クラウドを単位とする「機能別」組織であったのに対して、クライアントの業種を単位とする「業種別」組織をより意識すること、リアルタイム性、イコーリティ(Equality、公平性)などを主要なキーワードとして議論がなされた。
中でも、同社が機能別クラウドを連結したサービスを提供するという方針は、極めて大きな変化を示していると感じた。
マーケティング戦略立案の能力差は、デジタルテクノロジーで拡大していく
個々のサービスや技術については、消費者のデジタル化によって極めて仔細な計測や働きかけが可能になっただけでなく、それらをとても少ない労力で実行できるようになってきたことが顕著だった。デジタルが個々人の能力を強化しているのはSNSが個人の発信力を強化したことなどでも例示されるが、マーケティング活動にもその効果が出てきたようだ。
これまでのマーケティングのデジタル化は、むしろ作業量の増加に繋がったということを経験してきたマーケティングリーダーは多いだろう。ようやく、想像し期待していた「マーケティング活動のデジタル化」が始まったような印象を持った。少し前まで戦車を運用するには5人の要員が必要だったのに、技術の進歩が3人乗りに変えていった。同じように、これからはブランドあたりに必要な人員の数は減っていくだろう。
これは人件費が安くなる、という直接的な効果だけを期待するものではない。確かに、あらゆる組織において人件費の削減にはつながることが予測されるが、大切なのはその先だ。
一人当たりの運用能力が上がるということは、一人当たりのマーケティング予算の管理・運用能力をあげる必要があるということだ。テクノロジーによってマーケティング予算の投下効率が改善していることを考えると、それぞれのマーケターの優劣が今まで以上に顕著にビジネス結果につながることを意味するだろう。量としてのマーケティング予算や時間などの資源に、人材は係数として影響する。
優秀なマーケターが使う10億円のマーケティング予算と、そうでもないマーケターが使う同額の10億円のマーケティング予算では、その威力に極めて大きな差が出る。
テクノロジーは計測能力の強化、ビッグデータの運用とそれらを統合管理するAIの進化によって、効果予測の確度を向上させ、各種マーケティングプログラムの精度を自動補正してくれるだろう。現場での施策設計やプラン運用の分野では、勘と経験にもとづいた活動は廃れていくと思われる。
つまり、何を正しい目的とし、どのような資源をどう組み合わせるのか、といったマーケティング戦略立案の能力差は、デジタルテクノロジーで拡大していく。同時に、再現性と経験値の収集に長けた企業や、テクノロジーと人材育成の関係を正しく捉えた企業に成長機会が開かれるのだと思われる。
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