Film Craft部門とFilm部門の違い(日本人審査員のお話から)
ここからは、セミナーではなくFilm系のアワードの話です。Film Craft部門では、グランプリに「HOPE」という作品が選ばれていました。
「HOPE – INTERNATIONAL COMITEE OF THE RED CROSS -」
Film Craftの結果発表の後、制作会社のキラメキさん主催の勉強会に参加したのですが、そこでは「Film Craftとはなんぞや?!」と議論されていました。
つまり、「Craft」とは映像の「つくり」という意味で、アウトプット部分のクオリティが優れている作品に贈られると思っていたので、そういった視点から見てみると、もちろんこの「HOPE」は作品として素晴らしいのですが、もっと優れたものもあったのではないかという…。
その勉強会で、日本からFilm Craft部門の審査員を務めた資生堂の小助川雅人さんとお話する機会があり、そこでお聞きできたのは、今回のFilm Craftのクライテリア(審査基準)について。審査委員長は「Craftは、単なるテクニックじゃなく、原義としては『工芸品』。もともとは人間の生活のためにあるもので、Appleの『Barbers』なんて非常によくできたFilmではあるけれど、世界のため、人間のために、どれだけ意義あるものか?という視点をFilm Craftでは持ちたい」と言っていたようです。
その審査基準に対する意見は様々あるのだと思いますが、要はその年々によって、クライテリアも違えば、アワードの結果も変わってくることがわかり、大変勉強になりました。
Film部門で誇らしくなった「CMプランナー」という仕事
最終日までカンヌで過ごしてみて、海外の映像はやはり尺が長いですし、なかなか「自分の日々のCM企画の仕事が、このカンヌの道に続いているんだろうか…」と悩ましく思うことも正直ありました。
ただ、最終日のFilm部門では、CM的なアプローチの作品というか、もちろんそれを制作できるかどうかは別として、自分が好きだと思える作品が上位にきていたことで、嬉しくなりました。日本の作品も獲っていて、とても好きなCMだったので、それも勇気になりました!
ラストはすでにご存知かと思いますが、Filmの受賞作品から自分の好きな作品をいくつかご紹介して、本レポートを締めます。
(※一部、公式動画のないものはタイトルのみ紹介します)
GRAND PRIX
「It’s a Tide Ad -Tide -」
GOLD
「THE SECRET – MONDE NISSIN -」
GOLD
「CLOWNS – AUDI -」
SILVER
「さけるグミ v.s. ながーいさけるグミ - UHA味覚糖 -」
(おめでとうございます!!)
どれも製品機能をチャーミングな企画で行い、映像としても面白さを担保しながら強く残せているところがCM的で好きでした。
90秒なら夢じゃない!!…はずだと感じました。
やはり自分の日々の職種に近い部門の興味が高いと思いますので、クライテリアと照らし合わせて見ると、モチベーションもまた上がると感じます。
Film部門の発表終了後、レッドカーペット上の電光掲示板には「SEE YOU NEXT YEAR」の文字が。素敵な作品を見た直後だったので、さらに気合が入りました。いいフィルムは見た後しばらくの間、高揚感が残ります。アワードのラストがFilm部門なのはカンヌのルーツもあるのでしょうが、この独特の高揚感を残すためなのかなと思いました。いいプログラム構成だなと個人的には感じます。
来年、またカンヌにいけるよう、これから1年間がんばります!
ここまで拙い文章をお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
澤邊浩祐(さわべ・こうすけ)アサツー ディ・ケイ クリエイティブ本部 CA局 CMプランナー/コピーライター
1984年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、2008年ADK入社。営業職、ストラテジックプランナー職を経て、2014年にクリエイティブ転局試験に合格、クリエイティブ局へ。テレビCMを中心に、戦略立案、コピーも含めた表現開発を行う。最近の仕事:明治製菓「Meltykiss」、ユニリーバ・ジャパン「AXE GOLD」、メルカリ「売ルフ&買ウガール」シリーズ、ZENT「変革、上等。」など。
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