アーティストが語る「リアルな」アーティストブランディング、超入門

【前回コラム】「ダンサーを「ダンスアーティスト」に変えた!?動画サービスの変遷」はこちら

国際フォーラムで単独公演を行うという快挙を成し遂げたDAZZLE(写真:飯野高拓(梅棒))

アーティストにだって、マーケティングが必要だ

次回に引き続き今回のコラムも、ダンサーがいかにして幸せになるかということに比重を置いて書きます。今回はダンサーのみならず、若手のミュージシャンや役者さんや芸人さんや、フリーランスの広告クリエーターの方にも参考になるようにできればと思っています。

ズバリ、アーティストのブランディングについてです。

僕がやっていることがアートなのかエンターテイメントなのかということは置いておいて、一般的に音楽や舞台などパフォーミングアートに関わる人を指す広義の「アーティスト」としての立場ではあると思うので、その知見も生かしつつ。

僕の周りにはダンサーはもちろん小劇団の劇団員などなど若手アーティストがたくさんいるのですが、彼らの一番の目標は当たり前ですが「売れたい」ということなんですね。

エンターテイメント志向の人ほど、「良い作品を作りたい」というのはありつつ「売れたい!」と熱烈に思っていますし、アート志向のコンテンポラリーダンサーであっても創作活動によって「最低限の生活ができるぐらいお金はもらいたい」とは考えています。

「売れたい!」に含まれるのはお金はもちろん、業界でのポジションを上げたいとか、実力者と共演・共作したいとか、多岐にわたります。

アドタイの読者のほとんどが広告関係者か広告に興味がある方々だと思いますので、マーケティングやブランディングの初歩的な考え方・知識は、仕事をしている以上持っていて当然のもの、とお考えだと思うのですが、アーティストのほとんどがそのような発想がありません。

僕からすると裸で戦場に突っ込んでいくようなものだと思うのですが、多くのアーティストはそうであるとも思わず玉砕していきます。

孫子の言葉で「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」(敵のことと自分のことをきちんと把握すれば、百戦戦っても負けることはない)という言葉がありますが、ブレイクしたくても出来ずに悩んでいるアーティストたちは自分からするとあまりにも「相手」のことを知らずに戦っているように見えます。

「相手」とは社会状況でもあり、ライバルでもあり、一緒に仕事をする人々でもあり、何より自分が感動させようとしているお客様たち。

自分のクリエイティブだけを考えた裸の王様は生き残るのが難しいので、幅広い視野を持つことはとても大切だと思います。

次ページ 「アーティストのブランディングは3段階」へ続く

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飯塚浩一郎
飯塚浩一郎

1978年生まれ。コピーライター・クリエイティブディレクターであり、ダンサー・振付家。言葉と身体をクリエイティブの両輪に、広告・映像・舞台・ファッションなど様々な領域を自由に行き来して活動している。慶應義塾大学卒業後、株式会社博報堂を経て、株式会社DAZZLE設立。広告においてはカンヌ広告祭シルバー、アドフェストゴールド、TCC新人賞など受賞。ダンスにおいてはダンスカンパニー「DAZZLE」で海外の芸術祭にも数多く招聘され、2017年のカザフスタンアスタナ万博のジャパンデーでもパフォーマンスを行う。坂東玉三郎演出の舞台「バラーレ」で主演を務めるなど、様々なアーティストとのコラボレーションも。都内病院を舞台に行われた日本で初めての本格的イマーシブシアター公演「Touch the Dark」は即日完売となり、多方面から注目される。

飯塚浩一郎

1978年生まれ。コピーライター・クリエイティブディレクターであり、ダンサー・振付家。言葉と身体をクリエイティブの両輪に、広告・映像・舞台・ファッションなど様々な領域を自由に行き来して活動している。慶應義塾大学卒業後、株式会社博報堂を経て、株式会社DAZZLE設立。広告においてはカンヌ広告祭シルバー、アドフェストゴールド、TCC新人賞など受賞。ダンスにおいてはダンスカンパニー「DAZZLE」で海外の芸術祭にも数多く招聘され、2017年のカザフスタンアスタナ万博のジャパンデーでもパフォーマンスを行う。坂東玉三郎演出の舞台「バラーレ」で主演を務めるなど、様々なアーティストとのコラボレーションも。都内病院を舞台に行われた日本で初めての本格的イマーシブシアター公演「Touch the Dark」は即日完売となり、多方面から注目される。

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