アイデアはデータで進化する。 ~ クリエイティブデータライオンズ審査を終えて ~ その3

<クリエイティブデータの審査を終えて>

データとは何か?データのクリエイティブ活用とはどういう意味か?

「Decent business case, but・・・(ビジネスケース的にはすごいのだが)」「It’s cool, but・・・(すごいアイデアだとは思うのだけど)」「I love this work, but・・・(これホント好きなのだけど)」審査中に何度も出てきたフレーズです。データのクリエイティブな活用が伴わない作品は例えアイデアが素晴らしく、結果を出していようとこのカテゴリでは評価されにくいという事実があります。それが審査中のジレンマでもありました。

ではデータのクリエイティブな活用とは何であるのか?そもそもデータとは何であるのか?これはプレジャッジの段階から個人的にも考えていたことですが、結論から言うと審査期間中においても、データの明確な定義づけは行われませんでした。おそらく、データと呼べるものの範囲が広大すぎて、体系立てて定義することが難しいからだと筆者は思います。実際にエントリー作品で使用されているデータの種類は非常に多彩で幅広いものです。

画像、動画、音楽、音声、検索キーワード、ソーシャルコメント、アンケート結果、天候、気温、交通情報、事件・事故の発生数、POS、購買、視聴、味覚、臭覚、クリック、生体(脳波、脈拍)、スポーツの結果、地理・位置情報、DNAなど。

これらは全て「データ」と言うことができます。それにも関わらず、審査期間中に「それはデータと言えるのか?」という議論が何度も巻き起こりましたが、後から振り返って考えてみると、それはデータの新しさ、ユニークさを論点にしているのだと思いました。例えば「二次加工も施されていないただの画像データは、データと言えるのか」「ツイートデータ(本文)の内容に応じて的確な結果を返すって、ただのテクノロジー(キーワードマッチング)じゃないの?」「雨が降れば外出する人が減る、タクシーの利用も増える。当たり前だよね。それでも天候データをわざわざ使う必要はある?」など。

テクノロジーの進化により一般的になったデータの利用は「課題解決のための効果的なデータ活用」かもしれませんが、「クリエイティブな活用」にはならない。データやその利用方法が一般的(Commodity)になればなるほど、認められにくいというわけです。もちろんCommodity化したデータでも良いのですが、その場合は使い方に相当のアイデアがなければ認められない。どこからどこまでを「データ」として取り扱うのかは、その時におけるデータの新しさ、ユニークさなど、時価に近いもののように思います。この部門の評価ポイントを、筆者なりにシンプルにまとめると以下のようになるかと思います。

[データとしての新しさ・ユニーク性] × [データの使い方(アイデア)]

クリエイティブデータライオンズにおける「データ」は常に進化し続けるのだと思います。今年はデータとして認められたものが来年には(審査対象としては)データとして扱われない。こういったことが起きていくのだと考えます。ではデータ活用の最前線を把握するためにはどうすれば良いのか?少なくともショートリスト以上、可能であれば全エントリーのケースを復習するのが一番の近道かもしれません。

クリエイティブデータライオンズの意味とその未来

データのためにアイデアを考える、データの最前線を競うことに焦点が移ってしまうと本末転倒です。手段と目的が逆になってしまいます。一方で「アイデアを作るための方法論の一つとして、データから入ってみる」ということは有効なのではないでしょうか。

生活者の情報接触方法、態度変容、購買行動の変化、それに追随する社会・企業のデジタルトランスフォーメーションにより、取得できるデータの種類、量は増加し続けています。データはインプットであり、アイデアの基になります。データの幅が広がれば、アイデアの幅も広がるはず。データが進化すれば、アイデアも進化するはずです。

クリエイティブデータライオンズは、データ活用やクリエイティブのR&Dの場であり、データ活用の進化の発表のステージなのだと思います。そんな場所は、カンヌライオンズ以外にはないのではないでしょうか。来年はどんなデータ、そしてアイデアの進化が見られるのか。今から楽しみです。

※記事中の動画はカンヌライオンズに提出されたものではないため、本記事に記載されている情報と異なる可能性があります。

アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクター
望月 良太

コンサルティングビジネスをアクセンチュアで11年、広告代理店ビジネスを電通にて11年従事。アクセンチュアでは業務・ITコンサルティング、インターネット、Webシステムの開発を行う。電通ではストラテジープランニング、ショッパーマーケティング、新規事業開発、店舗開発、デジタルマーケティングを得意とする。現在、日本のアクセンチュア インタラクティブのマーケティングケイパビリティ統括。
カンヌライオンズ2018 クリエイティブデータ部門 審査員。

 

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