上白石萌歌の声を聴いて、「この人がくんちゃんだ!」と思った
細田:こうなっちゃいましたね(笑)。
中村:あとは上白石萌歌ちゃん。
細田:上白石さんが主人公の男の子くんちゃんをやってます。
中村:今までの作品を見ても、細田さんが単純に人として好きな人を起用してるんだなという気はしますけど(笑)、それこそ宮崎駿監督も声優っぽい声優を主人公にしないじゃないですか。細田さんの中でもそういうのはあるんですか?
細田:分けてるわけじゃなくて、どんな人でもお願いできたらいいと思うんですよ。声優さん、俳優さん、もともとは区別がないと思っているので。今回はくんちゃんを探すのにずっとオーディションをやって、4歳の男の子だから、小さい子かベテランの大人の女性がやると思っていたんです。ところが、上白石さんが現れて、声を出した瞬間に「この人がくんちゃんだ!」と思って。そういう風に思ったことに自分でびっくりしちゃって。
中村:そうだったんですね。
細田:18歳の女の子がまさか4歳の男の子をやるなんて全く思ってなくて。固定観念で縛られていたところをぶち破ってくれたのが上白石さんだったんです。なんでこの人だったのかというと、人間性的に近いというか、自分に一種の抑圧があって、そこから飛び出していこうというバイタリティがある。
声質というより本人の人物的に感じたという。主人公くんちゃんと性別も年齢も違うけど、同じような問題意識があって。そういう人と出会えたのが大きなポイントですね。でも出会えるかどうかは運で、上白石さんに出会えてなかったら今もオーディションをやってるんじゃないかというぐらい(笑)。来てくれてありがとうと。
こういうのって作品によって求める人間性が違うわけだから、優劣があるわけじゃなくて、この作品は上白石さんに合っていて、そういう人を見つけるだけの話なんですけどね。
澤本:以前、細田さんと話をしていて、オーディションをやってるいと聞いて、結論はどこにあるかというと、「自分の頭の中にある人が来るまでやる」と。
中村:オーディションを受けるほうはたまったもんじゃない(笑)。
細田:でもね、優劣じゃないし、試験でもないし。もちろんオーディションだから落ちたら自分に何か足りないものがあるんじゃないかと思われるかもしれないけど、そういうわけじゃないんですよ。みんな魅力的な人だけど、本人かどうかが問題なんですよね。
中村:お時間が来てしまったので、来週も引き続き、『未来のミライ』を深堀りします!
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構成・文:廣田喜昭