「フルーツインティー」成功のカギ
第一部ではユニリーバ・ジャパンの元島氏が登壇し、同社の紅茶ブランド「リプトン」のポップアップストア「Fruitsin Tea(フルーツインティー)」の成功理由を解説した。「フルーツインティー」は、リプトンの紅茶にフルーツなどを加え、専用ボトルで提供するポップアップストアだ。おととしから毎年開催しており、昨年は1店舗あたり1日約1000人が来店。広告換算額は約6億円に上る。
「ポップアップストアには、『カスタマイズ』『健康志向』『フォトジェニック』『限定』という4つのトレンド要素を詰め込んだ。作れる紅茶の種類は4万通りで、その中から消費者自身に選んでもらうことで、単なる購入から『体験』に昇華し、付加価値が高まる」(元島氏)アイコニックなボトルには広告効果も。各店舗で限定ボトルを用意し、希少価値を高めている。
背景にはどのような戦略があるのか。「コミュニケーション戦略を立てる際はまず、売り上げの向上や販路の拡大など、『最終目的地』を明確にする。それをもとに、世の中にどんな情報を、いつ、どのような形で発するのか、綿密に情報設計を組みます」(元島氏)
元島氏は、ひとつのコンセプトを全ビジネスユニットで展開する「ワンブランド・ワンエコシステム」の徹底を重視する。
「表参道のポップアップストアでのコンセプトが、地元のスーパーで売られている商品にまで息づいているか。そういったところまで意識しています」(元島氏)
小売り目線の空間プロデュース
続いて第二部では、商環境の総合プロデューサーとして、エイムクリエイツの樋口宗一郎氏が、事例ともに同社のソリューションを紹介。同社の業務は店舗の誘致に始まり、内装からVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)などのいわゆる「箱」を作ること、そしてその箱に人を呼び込むためのプロモーションだ。
「グループ企業である丸井の売場やPR部門出身の社員が多いのが当社の特長。クライアントに親身になってソリューションの提案ができるのが、ほかのデベロッパーさんとの違いです」と、同社ならではの強みを紹介した。
ブランドの世界観を訴求
第三部では、両氏に加え江崎グリコでアイスクリームのマーケティングを担当する若生みず穂氏が登壇、「ポップアップストアの始め方とこれから」というテーマでパネルディスカッションを行った。
若生氏によると、ポップアップストアを実施する利点は「ブランド体験をしてもらえること。情報に触れるだけでなく、その場で商品を食べてもらえ、世界観を味わって頂くことが貴重」だという。また成功のためのポイントを聞かれると若生氏は、「渋谷MODI」で開催した、「アイスの実」を使用したオリジナルドリンクが楽しめる「JUWATOPIA by アイスの実」を例に出し、「実際に体験した人からの情報拡散を促すことができるような仕掛けづくりに注力した。結果、開店2日目から『Twitter(ツイッター)で友人が投稿しているのを見て来た』という人が多くいました」という。
元島氏は、「目的の明確化が大切。何を解決したいのか、ソリューションは本当にポップアップストアで適切なのか。消費者の声を読み解く必要がある」と指摘した。
また樋口氏はポップアップストアの開催場所について、「JUWATOPIA by アイスの実」も開催された渋谷にフォーカス。「『若者の街』渋谷に行く目的は買い物がダントツだが、再開発で増えるオフィスの『大人』の需要も視野に入れる必要がある」と分析した。
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