企業の事業構造が変わる
第1部には、クリエイティブ・ディレクターとしてブランド体験デザインなどを手掛けるアーキセプトシティ代表取締役の室井淳司氏が登壇。リアルとデジタルが融合する時代において企業が目指すべき将来像を、事業構造の視点から語った。室井氏は「企業の事業構造には大きなパラダイムシフトが起きている」と指摘。「モノからコトへ」は消費の対象が移っているのではなく、モノを使って得られるコト(体験)に消費者の意識が移っているのだと説明し、その例としてトヨタ自動車の「e-Palette」を挙げた。
e-Paletteとは多目的に活用できる電気自動車のことで、同社はこれを使って移動、物流、物販などのモビリティサービスを展開する構想を発表。メーカーからモビリティサービスカンパニーへの移行を宣言した。「あらゆる企業がサービス業になっていく今後、自社はどうするのかを考えてみてほしい」
ECでは個人に最適な提案を
第2部には、資生堂ジャパンでEC事業推進部長を務める徳丸健太郎氏が登壇。現在ECの化粧品でトップシェアを誇る資生堂の取り組みを紹介した。
徳丸氏は「当社の取り扱いブランドは価格帯が幅広く、購買行動が異なるため、ECではその特性によってプラットフォームを使い分けている」と話す。資生堂が展開するECプラットフォームは主に次の3つ。ブランドの世界観の中でファンに深い体験を与える、「ブランド.com」。資生堂の顧客データを集約し、ブランドを横断して一人ひとりに最適なソリューションを提供する「ワタシプラス」。
利便性を重視する消費者に向けた、Amazonなど専業のECプラットフォーム。そのうえで「ECではパーソナライゼーションがカギ。タッチポイントは増えているが、すべてのデータを統合して一人ひとりに最適な体験を提供したい」と語った。
リアルとデジタルの利点を活かす新ソリューション
第3部には共同印刷の田邉憲一氏が登壇。共同印刷が提供するソリューションを紹介した。
オムニチャネルシステムの「マイ・ショッピング・コンシェルジュ®」は、店頭のタッチパネルサイネージと顧客用のアプリを連動させたシステム。サイネージでは商品選択が可能で、それ自体が売り場として機能する。さらにBeaconと連動させることで、サイネージに近づいた顧客に対し、アプリのプッシュ通知でサイネージの利用を促すこともできる。「すべての顧客行動は履歴に残るため、マーケティングデータとして活用し、CRMの精度を向上させます」
続いて紹介されたのは「VRコマース」。これはVR空間上の店内を巡ることによって、店鋪に行かなくても商品を手に取るような体験ができるというもの。VR空間上で気に入った商品を選択することでECサイトに遷移し、購入できる。基本は店内を撮影してVR上に再現するが、フルCGでの制作も可能。最大4000倍まで拡大でき、アパレルであれば洋服の質感までもが確認できる。最後にエスキュービズム真田氏が、動画から直接カート投入・決済まで可能な「動画コマース」を紹介した。
広がるECの可能性
第4部では、室井氏、徳丸氏、田邉氏が購買体験についてのパネルディスカッションを行った。ECとリアル店舗での顧客インサイトの違いについて聞かれると、徳丸氏は「ECは目的のものを買うという方が主で、リアル店舗のように思わぬ買い物をしてしまったということは少ない」と分析。一方田邉氏は、「ついで買いや衝動買いといった顧客行動の誘引も当社のソリューションのねらい」と答え、室井氏も「リアルに近づくほど購買単価は上がるのかもしれない」と話した。
お問い合わせ
共同印刷株式会社
http://hc.kyodoprinting.co.jp/
tel.03-3817-2220