事例2:Warby Parker
Warby Parker(ワービーパーカー)は、2010年にニューヨークで創業したローコストでファッショナブルなアイウェアを提供するブランドです。Warby Parkerは、商品を体験できる店舗の他に、顧客が試着してみたいアイウェアを5点まで5日間無料で貸し出しをする「Home Try-On」というサービスを展開しています。
<online>
顧客はまず、Warby ParkerのEコマースから、試着したいアイウェアを最大5点選ぶことができます。
<real experience on online>
選ばれた5点は自宅に届けられ、5日間使用することができます。
<online>
顧客はアイテムを5日間使用し、気に入った商品があればEコマースから購入できます。使用した5アイテムの商品は全てWarby Parkerに送り返し、Eコマースで購入した新品の商品を受け取ることができます。
また、どのアイウェアが自分に似合っているか迷った時は、アイウェアを装着した自分の写真に「#warbyhometryon」のハッシュタグをつけてSNSに投稿すると、Warby Parkerがアドバイスをしてくれます。2018年8月現在、インスタグラムに投稿された画像の数は、2万3千件を超えています。また、サイトではライブチャットで相談に乗ってくれるサービスもあります。
<offline>
それでも迷う場合は、2018年8月時点で80店舗弱展開されているリアル店舗を利用することもできます。この様にWarby Parkerは、Eコマースを軸にオムニチャネル化し、SNSにより顧客を巻き込んだ共感型マーケティングを実現しています。同社は2015年、アップルを抑えて「Most Innovative Companies 2015」第1位を獲得しています。
Eコマースを軸とする企業が、購買プロセスにおいて商品をリアルに体験するプロセスを設けることは、リアル店舗を軸とする企業に対する対抗策であり、今後も加速していくことは予測できます。ただしそのリアル体験の提供方法は店舗の開設である必要はなく、自宅での試着やショールームでも対応できます。どの様なチャネルを利用して、どの様な購買体験をデザインし、それによりどの様なブランドイメージを作っていくのかという、チャネルデザイン=ブランドデザインの時代へと移行しています。
室井淳司
Archicept city 代表/クリエイティブ・ディレクター/一級建築士
新規事業・サービス開発、ブランド戦略、空間開発などにおいて、企業のトップや事業責任者とクリエイティブ・ディレクターとして並走する。表参道布団店共同創業経営者。広告・マーケティング界に「体験デザイン」を提唱。著書『体験デザインブランディング〜コトの時代の、モノの価値の作り方〜』を宣伝会議より上梓。2013年Archicept city設立。博報堂史上初めて広告制作職域外からクリエイティブ・ディレクターに当時現職最年少で就任。東京理科大学建築学科卒。これまでの主なクライアントは、トヨタ自動車、アウディ、日産自動車、キリンビール、トリドール、ソニーなど。主な受賞はレッドドット・デザイン賞ベスト・オブ・ザ・ベスト、アドフェストグランプリ、グッドデザイン賞、カンヌライオンズ他国内外多数。
<コラムが書籍になりました>
『すべての企業はサービス業になる 今起きている変化に適応しブランドをアップデートする10の視点』室井淳司 著(好評発売中)
オートメーション化、シェアリング・エコノミー、O2O・・・要は何が起きているのか? 大きな変化を俯瞰し、判断の基準を持つことで戦略を正しい方向へと進めていきたいすべての人のための必読書です。