みずほ銀行はなぜ、プロモーションにTwitterを活用したのか。両社のキーマンが対談形式で振り返る。
継続的コミュニケーション&拡散を可能にするTwitterを中心としたキャンペーン設計
—今回のプロモーション実施の背景となったマーケティング上の課題はどこにあったのでしょうか。
向後:例年、口座開設が多くなる新生活時期に合わせて「新生活キャンペーン」を行っていますが、少子高齢化もあり、その獲得に際しては年々競争が激化しています。銀行として取引を増やすために、給与の振込口座を開いてもらうことはとても大事なことです。特に、重要なターゲットが大学生。なぜなら、社会人になって使用する給与振込口座も学生時代に開いたものをそのまま使われるケースが多く、大学入学のタイミングで口座をつくってもらうことが重要になるからです。
ターゲット層である10代後半から20代の若年層がどんなメディアに触れているのかを考えたときに、スマートフォンやソーシャルメディアは外せない。そこで今回、学生を中心にプロモーションを仕掛けるにあたってTwitterが候補にあがりました。
国定:Twitter以外のソーシャルメディアも検討されたのでしょうか。
向後:実は音楽フェスのようなイベントで若者に集まってもらうことも考えていました。しかしイベントは実施して終わりになってしまう一過性の取り組みです。キャンペーン期間中はもちろん、それ以降もコミュニケーションを取ることができて、かつ拡散する可能性があるという点でTwitterを選びました。
国定: Twitterは「Discovery Mindset(利用者が面白いことをみつける)」という性質のメディアで、世の中で起きていることを見つけようと、多くの利用者が集まります。新生活をスタートさせた若者たちが面白いことを探すことができるという点でTwitterが向いているという話をさせてもらいました。
また金融系の商材は、その広告となると「堅い」イメージで、生活者の側に無意識的な障壁があることに課題を感じていました。そこで、ターゲットの目線に合わせて、会話ができるような施策を考えました。
Twitterの利用者は自分の意見を発信したい傾向が強く、自ら選択して拡散にもつながるように、「プロモビデオ×カンバセーショナルカード×インスタントアンロック」の活用を提案しました。
向後:カンバセーショナルカードの広告は他社ケースを見たことがあり、これまで金融系の広告で見たことがないものだったので、是非やってみたいと思いました。
国定:社内から、反対の声はあがりませんでしたか。
向後:若年層向けというコンセプトだったこともあり、ソーシャルメディアを使うことは比較的、自然に受け入れられました。どちらかというと実施後に、「よく企画を通したね」と言われることはありましたが、おおむね好評でした。
国定:これまで銀行のアカウントが炎上した例はないので問題はないと思いつつ、初めてアカウントを開く企業では、炎上への不安を口にする方もいらっしゃいますよね。そのあたりはどのように対応していったのですか?
向後:最悪の場合は「謝罪し、アカウントを削除するしかない」という覚悟を持って始めました。もちろん、そんな事態に陥らないように動画や返信のコメントは事前に確認しながら進めていきました。
マスメディアとデジタル、両方の側面を併せ持つTwitter
—今回の施策のポイントはTwitter広告の中でも利用者の反応をより増やす「プロモビデオ×カンバセーショナルカード×インスタントアンロック」というフォーマットと、「みずほちゃん」という擬人化したコンテンツで届けたことにあるようです。
国定: Twitterは動画もツイートできますし、デジタルメディアとしても4500万MAU(Monthly Active Users)のため、最規模なリーチも担保できます。従来のマスメディアとデジタル、両方の側面を併せ持ち、拡散も起こりやすい。そこをまずは広告主様に理解していただいて、Twitterの特長をうまく活用してもらいたいと思っています。
ソーシャルメディアが浸透した現代は、生活者自身がメディアになることができる。生活者に認めてもらえない商品やサービスは淘汰されていく時代に、生活者にその良さを実感してもらえるような広告を展開できれば、一人ひとりの生活者がメディアとなって気に入った情報を拡散する。この循環をもっとも生み出しやすいのがTwitterだと思っています。
今回の提案では、利用者に擬人化したキャラクターによる動画を楽しんでもらい、カンバセーショナルカードを使って自らの意思で拡散を選択していくものを目指しました。
さらに、インスタントアンロックカードから見られる限定動画が拡散の起点となり、利用者同士のコミュニケーションが生まれました。みずほちゃんの存在を軸に、多くの利用者が彼女を応援する仕組みができたことは、私の考えた企画の要諦を踏襲した形でもあり、とてもうれしかったです。
再生回数は約100万回、ハッシュタグのついたツイートも5,000件以上
—「擬人化」という方法を取る上で、気を使ったことはどんなことですか。
向後:銀行の宣伝色が強く出すぎないように、商品を扱う動画でもみずほちゃんが自然に使っている感じになるようにお願いしました。他にも拡散効果を企図して、リプライへの返信をしようとか、より自撮り風に、ということもお願いしました。
国定:それに付け加えて、宣伝色が出すぎないようにしながらも、いつもどこかに「みずほ銀行」の存在が感じられるようになっています。
—今回はホリプロとの取り組みで、タレントを起用することもパッケージになっています。広告主の立場からこうした形態にどのような印象を受けましたか。
向後:私たちが個別の商品プロモーションでタレントを起用することは、あまりありません。パッケージになっていたのは大変助かりました。タレントも、新大学生のイメージで名前はみずほちゃんということだけを伝えて、何人か候補をあげていただきました。永島 聖羅さんは、以前Web動画に出ていただいた経験があったので、そういうことも配慮してもらいました。
国定:Twitter広告のメディア費に制作費とキャスティング費が内包されているというのは嬉しいことなのか、どうなのかという点に不安があったのですが、そのように言ってもらえてよかったです。
ちなみに、向後さんが広告会社の立場なら、このやり方をほかのクライアントさんにもオススメしますか。
向後:ここまでのクオリティで動画を20本も制作してもらったので、最初はやや無茶なお願いをしていると思っていました(笑)。再生回数も100万回超、ハッシュタグのついたツイートも5000件以上と想定を大きく上回る結果が出ましたし、フォロー数も多かった。コメントの質も非常にポジティブなものがたくさんあったので、オススメのスキームですね。
2カ月でフォロワー8,000名超、社内でも話題に
—今回、手応えを感じた瞬間はどのタイミングでしたか。
向後:初ツイートの日、後日ツイートする動画の撮影に立ち会っていたのですが、その間にフォロワーが1000件を超えていたことを知ったタイミングです。あと、「みずほちゃん可愛い」というコメントのなかに「口座つくりに行かなくちゃ」という銀行に関するものもあったので、効果があったと思いました。
みずほ銀行で口座開設をしてもらうことはもちろん大事なのですが、当行のブランドイメージや認知を高めるという意味でも、とても効果があったと感じています。
国定:私も撮影に立ち会っていたのですが、会社に戻って、同僚が盛り上がっていたのを見たとき「よし」と思いました。
向後:Twitterさんの社内でも盛り上がったという話は驚きでした。他社からの問い合わせも入っていると聞きましたが。
国定:社内ではホリプロの永島 聖羅さんパッケージもそうですが、擬人化が一番新しいものとして評価されました。擬人化のアイデアついてはメディアでの露出もあり、いろいろな業種業界から問い合わせが入りました。やはり生活者との壁を低くするというところが響いたようです。
また、これまでカンバセーショナルカード×インスタントアンロックの手法を使った広告のほとんどがプレゼントキャンペーンだったので、プレゼントなく2カ月でフォロワーを8,000人集めたというのは驚異的。ここは社内でも話題になりました。
—今後の展望をお聞かせください。
国定:みずほ銀行さんは通年でプロモーションをされているので、そこに一人、広告塔のようなキャラクターを固定して、生活者目線で発信することは可能性があると思っています。メディア毎に立てることも効果的かもしれない。Twitterにもコミュニケーションの流儀みたいなものがあるので、メディアの特性に合わせて考えることが重要です。
向後:当行には各商品にそれぞれ担当者がいて、個別にプロモーションを行なっています。今回は新生活キャンペーンでしたが、「みずほちゃん」を起点として、いろいろな商品に展開するようなことができれば面白いのではないかと感じています。