通勤電車で妄想ツイートを始めたら「書く道」が開けた、夏生さえりさんの半生とは

通勤電車は“妄想ツイート”の時間

毎日、終電まで働いていた。そのうちに“想像力の危機”を感じ、通勤電車で始めたのが“妄想ツイート” だ。これは「今ここにないものを考えて書く」というTwitter上での遊び。ファンタジーや恋愛まで色々なジャンルに挑戦して、一番反響が大きい恋愛系に絞って、ほとんど毎日投稿した。想像力の訓練と同時に、編集者としてできるだけ広く届くツイート(や文章)を研究する意味もあった。この時間帯、みんなはどんなことが欲しいんだろう?どういうものがあれば、幸せな気持ちになるだろう?

ターゲットを意識して色々と工夫を凝らす。それが、頭と文章のトレーニングになればいいなと思っていた。

当然、「フォロワーが増えるといいな」という期待もあった。というのも、当時は編集者として「自分が編集している媒体の記事がもっと読まれるようになってほしい」と思っていたのだ。立ち上げたばかりのメディアには、媒体の読者がいない。さらにライター自身にも固定の読者がいないとなれば、一体どこから読者はやってくるのだろう?

いや、どこからもやってこない。爆発的に面白くつくれた記事が奇跡的に誰かに拾われることはあっても、そこに至るまでの多くの記事はインターネットの海に流れて二度と目にすることがない。それが悲しくて仕方がなかった。それなら、編集者が発信力を持って記事への入り口になったっていいじゃないか、と考えたのだ。

実際に何ができるか、どうなるのか。その想像はあまり具体的ではなかったけれど、Twitterに力を入れるようにした。コツコツと投稿し続けたおかげで、フォロワーは1万、2万と増えていった。

次ページ 「決意も覚悟も不安もなく、迎えた独立の日」へ続く

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