通勤電車で妄想ツイートを始めたら「書く道」が開けた、夏生さえりさんの半生とは

「届けたい」という気持ちは、どんな書き手も同じ

いつのまにか“書く” で生きていけるようになり、書籍まで出版させてもらえたのは、わたしの場合SNSに読者がいてくれたことが大きい。

SNSのおかげで、それぞれが持つ読者の数が可視化されて(当然全員が読んでくれているわけではないのだけれど、それでも)、仕事を頼む側の“安心材料” になっているのだろう。たとえ無名でも、少なくとも記事を書いた際に最低◯万人の人に告知できるなら、と数は土台のように捉えられている。

事実、わたしはそこまではっきりとは言われなかったが、出版社から「フォロワーが◯万人いないと書籍は出せません」と言われることもあるそうだ。そういった「数重視」の風潮に対して疑問を持ったり憤ったりする人もいると聞く。けれど、会社として保証が欲しいと思う気持ちはとてもよくわかる。入り口は数でも、出口は質で戦えるように努力していくしかないと思うのだ。

様々な議論が行き交うこの話題だけれど、「(特に無料で読めるウェブ媒体においては)人に“届ける” ところまでが、書く人の仕事じゃないか?」と個人的には思っている。SNS発のライターであろうが、堅気のライターであろうが、「届けたい」という気持ちはどんな書き手も同じであって、そのための方法として新しい手段を用いているだけ。たくさんの人に届けたい。その願いを持ってSNSでの発信にも時間を費やすことが、わたしには悪いとは思えない。

ちなみにフォロワーが増えると、書く側にもメリットがある。読者とコミュニケーションがとれるのだ。リクエストや感想がダイレクトに届くのは、とても勇気になる。記事の感想が書かれた嬉しすぎるメッセージをスクリーンショットして、一緒につくってきた編集者さんやクライアントに送る。そうやって「嬉しいですね」と言い合う。読者の意見だけがすべてだと浅はかなことを言うつもりはないが、繰り返す仕事のなかでのご褒美をもらったような気持ちになる。

次ページ 「きっと、この先の未来も悪くない」へ続く

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