DAZZLEが生み出す、「ジャパニーズ・イマーシブシアター」
飯塚:そんな中、かなりリスクテイクをして昨年、日本で初めての本格的なイマーシブシアターとして「Touch the Dark」を上演した訳ですが、結果的にチケットが即完売するほどの人気となりました。特に、印象的だったのが特別な体験ができる高いチケットから先に売れていったこと。イマーシブシアターの日本におけるポテンシャルを感じました。
DAZZLEが作るということで、工夫したことはなんですか?
長谷川:DAZZLEは10年以上の舞台活動の中で様々な道具を使い、様々なシチュエーションで踊るということを続けてきたので、その得意なことを生かせるように作りました。
また、ニューヨークで見た二作品の「自由に探索できる」ということと「演者に導かれる」ということの双方に良さがあると思ったので、それをバランスよく構成したつもりです。日本人の観客としてはおそらくどちらも一辺倒だと苦しくなると思ったんです。
あとは、物語をある程度は理解できる設計にすることと、ダンスのショーとしての強さはニューヨークのものよりはるかにあると思います。
飯塚:「Sleep no moreは最低だよ!」という人の多くは、そこの不満ですからね。訳が分からないというのと、エンターテイメントとして面白くないという。
私はダンスを近くで見るのがもともと好きなのですが、よく舞台上で自分が踊らないパートの時に横で踊っている他のメンバーのダンスを見ていて「ここから見るのが一番いいんじゃないか?」と思っていたんです。イマーシブシアターではダンスを超至近距離で見られますし、さらに自分の見たい位置から見ることができる。これはダンスにとっても大きな可能性だと思いました。
その2017年の初演を経て、今年は9月に東京ワンピースタワーで漫画「ワンピース」の世界を舞台としたイマーシブシアター「時の箱が開く時」、11月に廃病院での「Touch the Dark」を上演することになりました。
長谷川:ワンピースについては告知がジャンプに掲載されたことがまず嬉しかったですね(笑)。
内容はまだ言えませんが、恐らく漫画原作でキャラクターが出てくるイマーシブシアターというのは世界でも初めてだと思うので、どんな反応があるか楽しみです。
また、多くの方がイマーシブシアターを初めて体験する機会になると思いますので、気を引き締めて制作したいと思います。
飯塚:他にも今後、例えばお寺やお城を和風の作品を制作したり、日本の地方に伝わる物語でその土地ならではの作品に挑戦したりしてみたいですね。
長谷川:DAZZLEはイマーシブシアターに限らず、これからも世界で自分たちにしかできないものを生み出し続けていくと思うので、その志を応援して頂けたらと思います。
12回に渡って当コラムを連載してきましたが、一番願っていたことは、ダンサーにも、広告クリエイターやクライアントの方々にも、ダンスの可能性を感じてほしいということでした。
前半でご紹介してきたダンサー・作品の数々や、後半インタビューをさせて頂いた方々の想いを通して、読んでくださった皆様が「こんなことができるんじゃないか」と想いを巡らせて下さったり、さらにより良い作品が生まれていくことを切に願っています。
連載中にもたくさんダンスクリエイティブに関するご相談を頂いていますが、ダンサーのみならずクリエイターや企業の方のお力になれればと思っています。物理的に難しければ適切な人をご紹介もできればと思います(笑)。
皆様ぜひ、ダンスを楽しんで、ダンスで稼いで、ダンスで幸せになってください。
最後にクリエイターとして自分が第一にダンスクリエイティブの可能性を提示するべきだろうと思いDAZZLEのお話をさせて頂きましたが、よろしければダンスに触れてみる機会としてご活用いただければと思います。
東京ワンピースタワー×DAZZLE「時の箱が開く時」
DAZZLEイマーシブシアター「Touch the Dark」
長期間ご愛読いただき、誠にありがとうございました!