視聴者を横串でつなぐマーケティング手段としてのファン施策(ディーライフ)

ファンに成果を求めてはいけない

藤崎:実際に取り組まれて、いかがでしたか。

室井:最初にファンの方々とキックオフミーティングを行いましたが、そのあとしばらくは私たち事務局からの情報提供に終始してしまい、アンバサダーの方に話題を広げてもらうのを見守るような体勢になっていました。

当時のやり方には反省点がいろいろあります。特にお金をかけた施策なら、それだけの成果を数字で出さなければならないと考えていたのは、今から思えば間違いでしたね。

藤崎:マスマーケティングのスタイルから抜けきれなかった?

室井:その通りです。アンバサダープログラムは「人を介した新しい媒体」という認識が強かったのかも知れません。活動のゴールも、アンバサダーにどのくらいの数をクチコミして頂けたかとか、ディーライフの認知向上にどのくらいつながるのか、などを目標にしていました。

しかし、実際にリーチの伸びなどを見ただけでは、アンバサダープログラムの成果がよく見えてきませんでした。一部の方は、プログラムに参加する前も、すでにたくさんの情報発信をしてくださっていたことも関係があったと思います。

藤崎:マス広告では、例えばTVCMのオンエア量を増やすとリーチが増えますが、アンバサダープログラムでは予算に応じてすぐにクチコミやリーチ数が伸びるわけではないですからね。

室井:そうなんです。しばらくやっているうちに、「あれ、もしかしたらこういう風にやってはいけないのかな」と感じるようになりました。そもそも、アンバサダープログラムというのは、直接の見返りや短期的な成果を目的にしてはいけないのではないかと。

藤崎:重要なポイントかも知れませんね。ファン重視のマーケティグ成果は、マスマーケティングの成果とは違うということですね。今までとは違う発想が必要なので、切り替えが難しいのも当然です。

室井:新しい経験だったにも関わらず、古い尺度で、成果を測ろうとしていたのです。まずは「数で成果を測る考え」を改めないといけないと思いました。

次ページ 「ファンに「ありがとう」と言われる新鮮さ」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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