“伝説のゲーマー” が小説家に「ものを書くことは 幸福な呪い」

あなたはすでに書くという仕事を行っている

そういうわけですから、いまの私にとって、書けない、ということはありません。かんたんなことです、困ったら、先達の戦いのあとを辿ればよいのです。あなたがいまお読みになられているこの文章さえ、鼓直さんが訳した、ボルヘスの講演集の文体を模しています。

しかし、これから作家として、誰ひとり考えたことのない未開のテーマに挑むとき、ほんとうの挑戦がやってくるのだろう、と思っています。

そして、書くことのやりがいは、実はこの挑戦そのものにあります。自分自身が組み上げた有機的な言語システムにおける構造上の問題、物語上の問題、そしてなによりも、倫理上の問題が立ち現れてきたとき、それらの問題を対処しようとする自分の魂のありようが思いもよらない形で明らかになり、どこかぜんぜんべつの光に満ちた世界へと運ばれていってしまう、あの法悦の体験にあります。

ですから、自分の書いたものが仕事にならないと悩む方がもしいらっしゃれば、私に言えることはひとつだけで、これは断言できます。あなたはすでに書くという仕事を行っている。それこそがもっとも大切なことで、ほかはすべて些事です。


「もっぱら呑むのが好き」という藤田さん。編集部が撮影のため自宅を訪れた際にも、ダイニングテーブルには一升瓶……。何やら深めの晩酌をしていた様子で、「撮影ってことは分かってたんですけどね、すみません!」と顔を赤らめる一面も(編集部)


『編集会議』2018年夏号では、「大家さんと僕」をはじめとする2018年上半期のヒット書籍の裏側を多数取材。巻頭特集では「“書いて、書いて、書いて、生きていく”という決断」と題し、塩田武士さん、上阪徹さん、藤田祥平さん、燃え殻さん、夏生さえりさん、高氏貴博さんの人生に迫っています。
 

 

『編集会議』2018年夏号もくじ

【関連記事】
『egg』を復活させた21歳のギャル編集長「ギャルはSNSの中にいる」
お笑い芸人、新聞記者、そして小説家・塩田武士に。
通勤電車で妄想ツイートを始めたら「書く道」が開けた、夏生さえりさんの半生とは
「さよなら、おっさん。」で話題のNewsPicks 新編集長が「ミドル転職」決めた理由
「会社員の燃え殻さん「僕は渋谷のサイゼリヤで作家になった」」
「大家さんと僕」は表紙で揉めた!? 編集者も腰を抜かした、カラテカ矢部の才能とほっこり裏話

1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ