これからは、住まいが経済圏に。京都の外れで次のルールを作る。

場所の価値を上げる作り手のためのREDIY、そして新たな展開へ。

2015年に完成した「REDIY」。場所は京都駅から1駅の丹波口駅にあります。今、京都市内の主要な場所は観光客向けのまちとなりつつあります。丹波口駅周辺には卸売市場があり、言うなれば京都のバックヤードのような場所。だからこそ、多少の作業音が出る「住まい」が実現できたとも言えます。そんな「REDIY」、そして次の展開、京都を拠点にする醍醐味とは一体何なのでしょうか?

—「REDIY」には、どのような方々が集まっているんですか?

扇沢:木工、鉄工、建築などさまざまなジャンルのものづくりに携わる方々が集まっています。「REDIY」に住んでいる方はもちろん、普段は自分の仕事をしながら土日だけ来る方もいますね。ワークスペースには木工や鉄工などの機材を置き、住人じゃなくても個人ブースも借りることが可能で、多種多様な作り手が集っています。住んでいる方も居住スペースの個室は勝手に改装してもいいというルールです。

「REDIY」のワークスペースでの作業風景

「REDIY」のブースでの作業風景

—前の住人から部屋を受け継いで、自分なりにアップデートするんですよね。大喜利みたいですね。ものづくりに携わっている人だったら、腕が鳴りそう。

扇沢:もうみんなバンバン床を張り替えたり、壁を塗ったりしています。なので、当然全室仕様が違いすね。

—もはやそれ自体が作品というか、新たな価値ですよね。住めば住むほどものづくりとしての場所が「住まい」からアップデートされるのにはとても可能性を感じます。家賃を払って住まいを得ること。プラスアルファの価値として、自分の仕事につながる部分ではやはり投資。もちろん投資なので、個人的なリターンとしてどんどん自分の活動の幅が広がるし、場所のリターンとしては面白い職人やクリエイターが輩出されることが場の価値を高めること。このことは起業当初から一貫していますよね。

扇沢:最近ではコワーキングスペースといった形態が主流だと思いますが、僕らはあくまで仕事の価値の提供を「住まい」や「家賃」で提供したいんです。これからの時代、ワークスペースが増えるのではなくて住居が拡張する方向になると思います。今、水面下で進めている次の事業はアーティスト向けにそのことを実施する予定です。しかも、REDIYのある丹波口駅周辺、つまり京都のメインストリームの外れで。

—若い職人、クリエイター、アーティストが京都の丹波口に集まってきて、将来的にはまちとしての匂いも変化しそうですね。

扇沢:ジェントリフィケーション、つまり賃料が安い場所がクリエイターなどの拠点となり、土地の価値が上がり高級住宅地化していく流れというのが世界にはあって。例えば、ロンドンの人たちは次のジェントリフィケーションが起こるまちってどこだろう?ということを話題にしているそうです。日本は戦後から人口が増え続け土地が足りない状況の中、現在人口が減少してきて初めて他の国のように「次、面白くなる場所はどこだろう?」みたいなことを、僕らの世代からなら仕掛けなられるかもなって。

—京都には、まだまだ可能性がある土地がありそうですよね。扇沢さんは大学が京都だったというのもあると思うのですが、そもそも拠点を京都にしたのって理由はあるんですか?

扇沢:生まれも育ちも京都なのと、京都にいる人たちに可能性を感じているからです。実は、京都の人口の10分の1は学生で、芸大生の割合も非常に高いのが特徴です。京都は着物業界をはじめ、昔から職住一体で個人事業として活動されている方々の密集地でもあります。アートやクリエイティブを学ぶ学生、そして職住一体が根付いているという点で、京都を拠点にすることは文脈上有利だと考えています。

—なるほど!面白いですね。以前、「関西で戦う」に登場していただいたYOKOITOの中島さんも文脈をひもとき、まちや人に可能性を感じているので京都を拠点にしたと話していました。ちなみに、「株式会社めい」としては、どのような基準で新たな事業を立ち上げているのですか?

扇沢:無理やりするというより、流れに身をまかせていますね。こういう流れだから、これをやろうみたいな。ただ、面白い株式会社であろうとは意識しています。僕らにも株主がいて、株を保有してもらっているのですが、意識的に会社をアート化していて絵を買うように株を買ってもらいたいなと思っています。会社ってアートですよ。時代と自分の個性が反映される理念って、アートにおけるコンセプトですし。そういった意味でいかに時代を捉えるかに関心を持っていて、いかにお金を稼ぐのではなく、時代の象徴になるかどうか。「株式会社めい」の意思決定は、そこにあります。そのためには色々とファイナンス部分を抑えなければなんですが、幸いにも得意ですので。

—ものすごく説得力がありますね。会社のあり方も変わりそうです。ぜひ随時、経過観察させてください!今日はお話ありがとうございました。

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田中裕一(かたちラボ・コピーライター)
田中裕一(かたちラボ・コピーライター)

広告制作プロダクション勤務を経て、2012年に大阪・兵庫など関西を中心に展開するクリエイティブカンパニー「かたちラボ」を設立。関西のクリエイターと協働して、企業ブランディングやCI構築、事業計画立案、紙ものやWEBサイトなどの制作を行う。

田中裕一(かたちラボ・コピーライター)

広告制作プロダクション勤務を経て、2012年に大阪・兵庫など関西を中心に展開するクリエイティブカンパニー「かたちラボ」を設立。関西のクリエイターと協働して、企業ブランディングやCI構築、事業計画立案、紙ものやWEBサイトなどの制作を行う。

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