マーケターが陥りやすい「ターゲティングの罠」「ロイヤリティの幻想」

ロイヤリティとはプレファレンスの結果

では何がリピート購買=ロイヤリティを決めているかといえば森岡氏によれば、それはプレファレンスであって、ロイヤリティは対象にするような指標というよりも結果として見るべき指標ということです。すなわち健全な成長を促す①認知度、②プレファレンス(このふたつはバイロン・シャープ氏の用語ではメンタルアベイラビリティと呼ばれる)と③配荷率(同様にフィジカルアベイラビリティ)となります。

もちろん、だからといって顧客維持率を見ることが無駄だと言っているわけではありません。さきほど言う通りブランド間では購買者が重複しているということは、常に既存顧客は個人レベルでは一定の割合でリピート購買し、複数ブランドをブランドスイッチしたり、購買頻度が増減しているということになります。維持率の増減に一喜一憂するのではなく、新規の購買と既存の継続の量の分布をみることで今後の成長を予測し、戦略を立てることが重要なのです。

カテゴリー全体としては購買の分布は森岡氏が言うように、真ん中を頂点にしてゆるやかに左右に下がるポワソン分布をしていますが、個人はプレファレンスによって異なったガンマ分布をしています。そして肝心なのは、ブランドごとに見るとその購買の頻度の分布はどのブランドも差がなく「負の二項分布(NBDモデル)」になっているというのが森岡氏、バイロン・シャープ氏の指摘なのです。この市場構造的な意味合いを理解したうえでのマーケティングの法則に従わない限り、実際の成長は望むことができないということなのです。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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