【前回の記事】「パパのマネジメントが家庭円満の秘訣!?-電通パパラボ座談会」はこちら
今回は博報堂が開発した、ぬいぐるみをおしゃべりにするボタン型スピーカー「Pechat(ペチャット)」について。便利な子育てアイテムとして多方面から評価を得ています。Pechatの開発エピソードから、子どものインサイトや適切なコミュニケーションについて探っていきます。
—簡単に、自己紹介とPechatの開発に携わるようになった経緯を教えてください。
林:私は入社11年目で、コピーライターや営業、さらにアニメ映画の制作に携わってきました。2年前にMDビジネスインキュベーション局に異動し、同時にmonomに参加しました。このmonomというのは博報堂内にあるモノ起点の事業開発をするクリエイティブチームで、ここでPechatのアイデアが生まれました。
私が加わったときには、すでにPechatのプロトタイプはできあがっていて、自社商品として発売していくことが決まっていました。このため、私はPechat発売に向けての最終的な企画・開発、販路の開拓や、発売後の販促プロモーションをおこなってきました。
髙田:私は2008年に博報堂に中途入社し、それ以来ずっと営業をしてきました。2011年に第一子を出産し育休をとり、その後一度復職し、2015年に第二子を出産し、2017年5月に復職し、MDビジネスインキュベーション局に配属となりました。
復帰当時は、時短で働いていたのですが、少し慣れてきたところでフルタイムにして、そこからPechatの開発に携わっています。
—Pechatの開発や発売までの流れについても教えていただけますか?
林:monomのチームリーダーが、自身の甥っ子姪っ子と遊んでいるときのエピソードから開発がスタートしました。その後、monomでプロトタイプの開発・改良を進め、2016年3月に米テキサスでおこなわれているテクノロジーの祭典であるサウス・バイ・サウスウエストでお披露目をしました。その後、クラウドファンディングのMakuakeで発売前プロモーションとして先行予約を受け付けました。
髙田:それと同時に、2016年4月にMDビジネスインキュベーション局ができ、そこがPechatの開発やプロモーションを引き継ぎ、16年10月の発売、17年12月の英語版リリースなどを推し進めています。
私はこの英語版のリリースから関わり、今はイヤイヤ期の子ども向けに「イヤイヤモード」という新しい機能の開発をしています。
—おふたりともお子さんがいらっしゃると聞いていますが、実体験がPechatの開発に活かされた部分などはありましたか?
林:私は5歳の娘がいるのですが、当時3歳で、開発の途中のPechatをよく自宅に持ち帰っては子どもの反応を見ていました。ほかの開発メンバーも同様で、Pechatに対する子どもの反応をスマホで撮影し、細かい言い回しを調整していきました。
面白かったのは、親が言いそうな言葉をぬいぐるみから言わせたとしても反応がよくないんです。結局、親に言われて嫌な言葉はぬいぐるみに言われても嫌なんだなと。たとえば「早くしないと遅刻しちゃうよ!」といった類です。
髙田:いつものセリフでも少し言い回しを変えて、ぬいぐるみだからこその言葉にするとか、ぬいぐるみっぽい特徴のある言い回しにするとか。そうすると振り向いてくれるということが見えてきました。頭ごなしではなく目線を下げて友達としての話し方や、疑問を投げかけて意識をズラしてあげるみたいな話し方が有効ですね。
林:子どもは繊細で、そういうところが見えているんですよ。あと、専門家の方にも意見をもらっています。「そんなことをするとおばけがくるよ」とか脅しに近い言葉の使用は避けています。
髙田:逆に、子どもがいないメンバーの視点が活きたりもします。私たちはどうしても親目線の言葉になってしまいがちなのですが、ほかのメンバーから「これって言われたら腹立つかも。もっと優しい表現、嬉しくなる表現は…」みたいな指摘があると、意図が丸出しだったなとハッとします。
—ブラッシュアップを進めるなかで、自分たちの想定していたシチュエーション通りではなかったみたいな話とかありましたか?
髙田:お出かけしているときにぬいぐるみを出してスマホをいじるのはハードルが高いのでは…ということがありました。だから今は、「使用オケージョンは家の中」と想定しています。
特に、イヤイヤ期はママとしては外でイヤイヤされることが困ると思うのですが、そこでさらにぬいぐるみを操作するのは気が引けますよね。“とにかく子どもをどうにか収拾しないと“というのが先決になってしまうので、確かにそうだなと思いました。外だとしても車やベビーカーでの使用を想定した方が、うまく利用してもらえるかなと。
林:当初の想定では、お出かけ中にお店で物をベタベタ触るとか、レストランでベルを鳴らしたがるとか、それを防ぐためにPechatを活用できそうだと考えていました。たとえばお店であれば、「○○を持ってきて」とかお手伝いを誘導させるセリフを30~40個用意したのですが、実際の現場では使う余裕ないぞ、ということがわかって、実装しませんでした。
—イヤイヤ期の話が出ましたが、イヤイヤ期の子ども向けの新機能の開発が進んでいるんですよね?
インタビューの続きは 『しゅふクリ・ママクリ』 へ
林翔太(はやし・しょうた)
株式会社博報堂
monom プロデューサー/コピーライター
1984年生まれ。中国福建省出身。2007年に博報堂に入社し、コピーライター、営業職、映画・アニメーションのプランニング職を経て、新規事業のプロデュースを担当。5歳になる一児の父。
髙田奈美(たかだ・なみ)
株式会社博報堂
ビジネスインキュベーション局 プロデュースチーム アソシエイトMDビジネスプロデューサー
1980年生まれ。茨城県出身。2008年に博報堂に中途入社。営業職を経て第二子出産後に新規事業プロデュースを担当。小1男子と3歳男子の2児の母。