「子育て」がプロジェクトマネージャーのスキルを磨く
前田:最初の話に戻りますけど、どんな風に子どもを育てたいかということを夫婦で共有していれば、家事や子育てへの夫のコミットの仕方まで話が進みやすい。プロジェクトを組み立てる時は、「 ロール(役割)・ルール・ツール」という「ルール三条」を意識しておくとスムーズにいくと思います。ただ、子育て中の妻は疲れているし、夫は仕事で帰りが遅いし、なかなか話し合う時間が取れないという悩みもありますね。
吉田:うちは4人目が生まれた5年前に、土曜日の夕方4時から子どもを預けて、夫婦で外食しながら話をする時間を設けました。これはパートナーシップへの投資だと思うんです。しかもおいしいものを食べながら話すと、家にいる時とは全然違う話ができます。それを一番下の子が3歳になるまで、毎月実施していました。今もしょっちゅう二人で出かけますよ。
前田:4時からディナーだなんて、発想が柔軟だなあ。企業というものは、そういう一見利益を生みそうにない投資を嫌がる傾向にありますが、実はそこがとても大事なんですよね。そういうところを押していかないと、いつまでたってもリニアなプロジェクトしかできないし、自分さえ我慢して頑張れば何とかできるという思い込みの働き方になってしまう。
吉田:産後ケアを広めていく課題もそこにあるんです。行政の両親学級だけではなかなか広まらないし、男性陣も参加へのハードルが高いので企業に協力してほしいんですけどね。
前田:ダイバーシティを進めているような企業に、プロジェクトの研修にこの産褥期の考え方を入れましょうと提案するといいかもしれませんね。
ビジネスは常に選択を迫られるので、選択肢の基準を持てるかどうかが重要です。必要なものと不必要なものを見極めたり、プロジェクトをスムーズに進めるために外部に委ねたり、そういう判断が問われてくる。それは子育ても同じですよね。だから仕事でそういう力を鍛えている人は産後ケアもうまくいけるかもしれません。また、産後ケアで経験したことは仕事で生きるかもしれない。そう考えると、子育て中の人はプロジェクトマネージャーの素養があるのだろうなと思えてきました。男が子育てに関わることは、けしてキャリアダウンにはならない。むしろキャリアアップのチャンスになるのだと。
吉田:そういう価値観になれば、男性も育児に参加しやすくなると思います。それに、男性の働き方が変わることで、管理職やマネージャーのイメージがよくなっていけばいいですよね。管理職になっても定時で帰れるし夫婦で仲良くできるようになれば、管理職をめざす女性もどんどん増えると思いますよ。
前田:いいですね、世の中が変わって光が差し込む感じがするなあ。すごく可能性を感じます。企業に働きかけに行きましょうよ!
吉田:ぜひ、よろしくお願いします!
書籍案内
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』
ルーティンではない、すなわち「予定通り進まない」すべての仕事は、プロジェクトであると言うことができます。本書では、それを「管理」するのではなく「編集」するスキルを身につけることによって、成功に導く方法を解き明かします。
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 対談バックナンバー
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