“女子向け“の正解
女子向けの商品を、女子社員が考える。ぶっちゃけて言えば、よく聞く話です。それだけではニュースになりませんし、なんだかピンク色のキラキラしたものができそうという妄想さえ広がります。そこで、私たち(プロジェクトメンバーは全員20-30代女子)は、ただ「THE女子向け商品」をつくるのではなく、ターゲットだからこそ考えられる「自分がいま本当に欲しいと思える商品」をつくろうと決めました。
それは決して、ピンクがNGであるというわけではありません。目指すのは、世の中に広がるステレオタイプな「女子」像を投影したデザインではなく、徹底的にいまのリアルな女子のインサイトを捉えたデザイン。身の回りで流行りそう、友達が話題にしてくれそう、と言った「生」の感覚を大事にすることを心がけて、細かなところまで企画を詰めていきました。
例えば、ファッション。第2弾では、男女がキスをするパッケージということで、複数人の男女がパッケージに登場したのですが、その一人一人のファッションを細かく決めていきました。その世代が今まさに着ていそうなコーディネートで、これもまた同世代の女性イラストレーターにイラストを描いてもらい仕上げていきました。
実は、このキャラクターたちの名前にもこだわりました。8人のキャラクターにつけられた名前は、ターゲット世代に多い名前ランキングの上位から取ったもの。同じ名前のキャラクターがいることでの親近感から生まれる自分ゴト化を狙いました。また、WEBサイトには、彼らのプロフィールや相関図も掲載。興味を持ってサイトを訪れてくれた人にほんのすこしでも楽しんでもらえるような、細かすぎる設定を用意しました。
パッケージを読み込むと見られるキスのストーリーも、私たち広告クリエーターが考えるだけではなく、プロジェクトメンバー全員で企画出しをしながら、その頃ブームが再燃していた「バックハグ」や流行語となっていた「あごクイ」などを足して、常にターゲットと世の中を両目に見ながら、設計していきました。
フォトジェニックの罠
最近はどこにいても「フォトジェニック」「映える」といった言葉が聞こえてきます。もちろん私もInstagramに写真や動画をアップしますし、このコラムのタイトルにも書いてしまいました…。そんな「フォトジェニック」至上社会のいまだからこそ、パッケージデザインにおいて気をつけるべきことがあると思います。
それは、企業やブランド側から一方的に「はい、フォトジェニックでしょ。写真撮ってー!」と言わんばかりのデザインは、受け手がかえって興ざめてしまうということです。フォトジェニックなものへの目が肥え、そのハードルはどんどん高くなっていますし、本来は自らの判断で写真に残したいもの、友達に見せたいもの、世の中に拡散したいものを撮って披露する場所であるはずです。その前提を履き違えてフォトジェニックを先行すると、ファンの心がつかめないだけでなく、ブランドからファンが離れていくリスクへと繋がってしまいます。
これは私個人の意見ですが、Instagramがここまで盛り上がるのは、他のSNSとは違い、ちょっと後ろに下がったコミュニケーションも許されているからだと思います。別に積極的な投稿をせず閲覧するだけでもいいし、いざ投稿する際には何となくいい感じに画像加工してくれる、というゆるさとやさしさが、ブームが続く要因になっているのではないでしょうか。
だからこそ、ユーザーに無理強いすることなく、アクションを自然と促すためのデザインが必要なのであり、そのための「余白」や「自分ゴト化」できる要素が効いてくるのです。「映える」の裏側にある、「わかってるね!」という褒められ共感。ファンを増やせるチャンスを生むコラボ商品であるからこそ、この的を外さないデザインをしていきたいなと、企画者として感じています。
次回は、いよいよこのリレーコラムも最終回です。コラボをすることで、ブランドやマーケターにどんなメリットがあるのか。キリンビバレッジの二宮さんにその辺りをお話しいただきたいと思います。
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