年内に復刊の「WIRED」新編集長が目指すのは「編集者のブランド化」

雑誌は世界観の表現の場

—11月には雑誌版の『WIRED』が復刊予定ですね。ウェブと雑誌、それぞれの役割について教えてください。

WIREDでは、ウェブ、雑誌、イベントや企業との新規事業など、その総体 を「メディア」として定義しています。 その中で雑誌は、WIREDの世界観や体現したい価値をステートメントとして 表現する最良の形だと考えています。

だから、雑誌はこれまでと同様、きちんと尖らせたものをつくり、代わりにウェブ版では読者の方々としっかりエ ンゲージメントを高めていきます。

紙版は、2017年12月発売のVOL.30をもって一時休刊に。2018年11月に復刊予定だ。

—世界観を表現するという意味では、デザインにもこだわっていらっしゃいますね。

WIREDはもともと、「メディアはメッセージである」というマーシャル・マクルーハンの言葉をデザイン理念のひとつに置いています。つまり、コンテンツだけでなく、デザインも含めたメディアの形そのものが読者の感情を大きく揺さぶり、コンテンツの受け取り方を左右するという事実に、しっかり向き合ってメディアを考えているんです。

ですから創刊時からCMYK(シアン、 マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色に加えて蛍光色を何色も使ったりしますし、写真の上に文字を載せるデザインを初めて試みたのもWIREDだと 言われます。当然、「読みにくい」場合 もあるのですが、それも含めた表現自体がメッセージなんです。そういった WIREDならではのこだわりは続けていきたいと思っています。

—WIREDでは、読者とのインタラクションも重視していますね。

WIREDの読者は、その独自の切り口 や世界観に共鳴してくれる方々で、もともと世代に偏りがないのが特徴なのですが、その中でもミレニアル世代をフィーチャーした「WIRED Next Generation」というイベントを、11月 に東京で開催する予定です。

もともとイギリスではティーンズを対象に数年前から開催して成功しているイベントで、最新テクノロジーの体験型セッションや様々なイノベーターとの交流などを通して、未来を担う若者たちをインスパイアするという試みです。日本でも今年からその第一歩と して、まずは20代をメインの対象にしてチャレンジしてみようと考えているんです。

ほかにも、企業の協力を得て「CREATIVE HACK AWARD」や「WIRED Audi INNOVATION AWARD」といっ た大きなイベントを開催しますし、 「WIRED Lab.」のような場を設けてインキュベーター機能を担っていきたいとも考えています。

WIREDはウェブや雑誌、リアルイベ ントなどのすべての活動を通して、読者と一緒に新しい価値をつくり出し、 大きなプレイヤーである企業の協力も 得ながらその価値を社会に実装していくところまでできるメディアを目指し ています。「強烈な価値観を発信し続 けるプラットフォーム」といったイメージですね。


『編集会議』2018年夏号では、「大家さんと僕」をはじめとする2018年上半期のヒット書籍の裏側を多数取材。巻頭特集では「“書いて、書いて、書いて、生きていく”という決断」と題し、塩田武士さん、上阪徹さん、藤田祥平さん、燃え殻さん、夏生さえりさん、高氏貴博さんの人生に迫っています。
 

 

『編集会議』2018年夏号もくじ

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