本記事では、クリエイティブディレクターの谷山雅計氏、アートディレクターの秋山具義氏に、第56回「宣伝会議賞」のメインビジュアルの制作コンセプトや、「宣伝会議賞」に挑戦する皆さんへのメッセージを聞きました。
—清原果耶さんの撮影を終えて、感想をお聞かせください。
秋山:清原さんがカメラの前にスッと立ち、シャッターを切った瞬間、その存在感に圧倒されました。「これはいける!」と1カット目で分かりましたね。2カット目の時に特に思ったのですが、彼女はカメラの前で被写体として求められる姿を演じる一方、客観的な目も合わせ持っていて、自分がどう撮られ、どう写っているのかを理解しながら形をつくっている。そのため、カットは良いものばかりで、感服しました。女優として演じること、そして周囲の目に自分がどう映っているのかを普段から意識していることが伝わってきて、本当に素晴らしいの一言に尽きます。
谷山:形が決まっていましたよね。すごく意識されているのか、自然にできる方なのかは分かりませんが、どちらにしても自然にデザインされたような形や動きになっていたのは、天性の才能を持っていらっしゃるんだなと思いました。
秋山:撮影の前に、コピー案を何案か出して谷山さんと見ていたのですが、撮影前は「これかな…」と思っていたものが、彼女の撮影が進むうちに、やっぱりこっちのコピーにしようと変わっていきましたね。
—今年の「宣伝会議賞」のビジュアルのコンセプトについて教えてください。
秋山:56回目を迎え、長く続いてきた「宣伝会議賞」でありながら、若い方に門戸を広げる中高生部門も盛り上がっていますよね。その躍動感であったり、明るさ、未来を感じるようなビジュアルをつくりたいと思っていました。
谷山:そうですね。「宣伝会議賞」に毎年、挑戦される方はあまりポスターを見て応募することはないかもしれません。ですから中高生含め、これまで応募をしたことのなかった方がポスターを見て興味を持ってもらえるような新しさを、コピーやビジュアルで表現したいと考えました。
秋山:特に、それまで広告やコピーに興味を持ってなかった方が駅貼りポスターなどを見て、「自分も書いてみよう!」と思ってもらえたら良いですよね。昨年のポスターは淡い色で表現しましたが、今年は昨年よりも強さを打ち出しています。そのパキッとした部分が目に入ってくるのではないかと期待しています。
—応募者である中高生、そしてクリエイター・コピーライターを志す方々に向けて、メッセージをお願いします。
谷山:中高生部門は昨年、たくさん良いコピーが集まりましたよね。僕は今年も本賞の方の最終審査員を務めますが、中高生部門の審査員をやりたいと思うくらい(笑)。楽しそうだなと思って作品を見ていました。いつも「宣伝会議賞」に挑戦されている方ではなく、中高生や初めて挑戦する方に向けて言うと、プロの書いたコピーであっても「なんだ、こんなの俺でも書けるよ」って感じることはたくさんあると思うんですよ。
「俺でも書ける」「私でも書ける」と思ったら、ぜひ挑戦してみてほしいですね。いざトライしてみると、自分でも軽く書けると思ったものが、結構難しいこともあるのだけど、そのハードルを超えることで楽しさも生まれてくる。見ているだけでは分からない面白さがそこにはあるので、頑張ってみてほしいなと思います。中高生の方は、「コピーを書くにはこうしなきゃ」と難しく思いすぎなくて良いので、自分の中にある言葉やアイデアを出してみてください。
ただひとつヒントを言うと、僕は広告やコピーって、誰かの幸せのためにあるものだと思うんですよね。だから、ちょっとアイデアに煮詰まったときは「誰かの幸せにつながるために、何を書いたらいいのかな」と考えると、自分の中から気づいていないモノが出てくることもあります。当たり前のことかもしれませんが、そういう風に取り組んでくれたらいいなと思います。
秋山:僕らが中高生の頃って駅とかに行くと、本当に素晴らしい広告がいっぱいあって、キャッチフレーズも輝いていて、とても刺激を受けました。
谷山:広告・コピーの黄金時代でしたよね。
秋山:でも今は、以前と比べて街中で見るポスター自体も減ってきていて、中高生の人たちは広告を見ても、ワクワクしていないのではないかと思うんです。だからこそ、「宣伝会議賞」のようなきっかけがあって、コピーというものの存在を知って、「広告やコピーって結構いろいろな人を引き付けるんだな」と分かってもらえるのは良い場ですよね。「広告をつくりたい」と思う人は、少し減っている気がするのですが、「宣伝会議賞」をきっかけに、広告の魅力に気づいて、広告を面白いなと感じてもらえたらなと思っています。
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