狭い世界でしか機能しないアテンション効果を脱するには?

テック企業が示す理想に見えるものの皮肉な矛盾

グーグルの発想はそもそも「世界の情報をアクセスしやすくする」という公共的な「広い」ミッションに基づいていますが、彼らがビジネスとして利益を得て機能しているのは、そもそも「狭い」検索ビジネスです。グーグルが旧来の物理的な資源に頼らずに高い収益を出せるのも、彼らが所有して生み出すものより、プラットフォームとしてすでに世にある人や情報などをつなげることに特化しているからです。そのような広さが逆に狭さを可能にしているといってもいいでしょう。

テクノロジーが遠隔地などの物理的な制限を超えて、より多くの取引を古い流通や媒介を通さずにアクセスできるようにしたことで、理念的には理想的な世界を生み出しながら、一方で一握りのプラットフォーム業者がアクセスそのものを提供することで利益を得ていることになります。このような批判は最近、スコット・ギャロウェイ氏が『GAFA 四騎士が創り変えた世界』で指摘している通りです。

フェイスブックも同様にですが、テクノロジーは確かに人々を簡単に即座につなげることを可能にしましたが、一方でそのような人々の情報をビジネスの場面においても、アクセスしやすくなる機能もはたしています。一見、大きな理想を掲げることで人類を幸せにするように見えながら、企業として存続し継続していくために個人の情報を他のビジネスの役に立つように提供することは、四騎士の企業の常套手段です。そしてそれはテクノロジーがもつ矛盾のようにも感じられます。

次ページ 「消費者に与える変化も理想とのギャップが激しい」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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