【今回のポイント】
〇常に「今」に問題意識を持ち、触れたニュースの背景を読み解き、自分のビジネスと相関がないかを考える。
〇21世紀はモノではなくサービスの時代。同業他社の動きより、異なる業界のニュースに事業開発のヒントがある。
サービスが中心になる時代、異業界の情報からヒントを得る
連載2回目は、アイデア発想に欠かせない、日頃の情報収集について私なりの方法論をお話ししていきたいと思います。
情報をインプットして、頭のなかにストックしておくことは大切です。ですが当然ながら、目的意識なしに情報収集を続けていては、知識はあっても応用できない人になってしまいます。
私が情報を収集する際には、テリトリーとすべき「領域」はあらかじめ決めていますが、「食品・飲料業界」の情報には、意識的に過度に触れないようにしています。21世紀はモノではなくサービスが中心になる時代。同業界の戦略から、企画のヒントは得づらいからです。逆に他の業界の成功ケースなどは、よくチェックするようにしています。
「コーヒー」が解決に貢献できる、社会問題を見つけ出す
またニュースに触れた際には、その背景を考えるようにしています。その背景を考えることで、自分のビジネスとの相関が見つかることがあるからです。
ビジネスにおける相関とは、いま社会で起きている問題の中に私たちの事業領域(自分の場合で言えば「コーヒー」)で解決できる可能性がある、ということ。
例えばネスレ日本では、2016年からIoT対応モデルのコーヒーマシン「バリスタアイ」の提供を開始しました。「バリスタアイ」を所有する家族や友人を、専用の「ネスカフェ アプリ」で友達リストに登録しておけば、「いつ、どんな気分でコーヒーを飲んだか」が互いにわかる仕組みになっています。
これは遠く離れている家族とのつながりを生み出し、安否を確認できるという点で、「コーヒー」が、核家族や高齢者の単身世帯が増える日本社会の問題解決に貢献できないか、という考えから実用化したものです。
少子高齢化、核家族化の統計のニュースだけ見ていてもその事象は結果でしかありません。なぜそういったことが起こるのか、それが起こった先にどういった問題が発生するのか、を考えるだけでも、自社が貢献できる課題が見えてきます。
一つのニュースからその背景、その先にある問題を仮説立てて読む。常に「なぜ、そんなことが起きているのだろう」と考えることで、新しい仮説が生まれたりします。
最終的に、担当者として自分の責任領域が限られているときなどは特にですが、自社が提供できる事業やプロダクトの領域は決まっています。そこからかけ離れたアイデアを考えたところで、実現可能性が低い。
そこで「自分は何屋であるか」というテリトリーを意識し、またその時々に取り組んでいる事業課題やテーマを念頭に置いたうえで情報収集をするようにしています。