『北の国から』を観てテレビの世界を目指した(ゲスト:大根仁)【後編】

広瀬すずのコメディエンヌとしての才能が爆発

大根:そうです。僕、舞香は15歳ぐらいのときに仕事をしていて。まだお芝居の仕事をはじめたばかりの頃。そのときの野良猫のような目の表情が印象的で、今もちょっと生意気なところがあるんですけど、芹香という役に合うなと思って。

権八:主演のすずちゃんは、僕はearth music&ecologyというアパレルのCMでご一緒していて話したんですけど、今回振り切ってるじゃないですか。広瀬すずのコメディエンヌとしての才能が炸裂してますよね。

大根:でもね、すずちゃんは(広瀬)アリスと姉妹じゃないですか。僕はオーディションで1回会ったぐらいですけど、姉妹の下の子って絶対にちびまる子ちゃん的な要素があるはずで、しかも静岡の普通の家庭で育っていれば、お茶の間ではいじられキャラというか、本当にまる子ちゃん的な要素があるんじゃないかと前から思ってたんですよ。だからコメディエンヌ的な芝居も絶対にできるはずだなと。

中村:あとは映画の見どころ、聞きどころが音楽ですよね。実は小室哲哉さんがやっていて、最後の映画音楽となるということで。

大根:俺は認めてないですけどね。あんなに音楽大好きな人が辞めるわけねーだろっていう(笑)。

中村:宮崎駿のように。

権八:また復活すると。90年代のヒット曲、映画の副題にもなっている、「強い気持ち・強い愛」という小沢健二さんの曲だし、あと安室ちゃんの。

大根:「SWEET 19 BLUES」、「Don’t wanna cry」。

権八:どちらもテーマソングという感じなんですか?

大根:そうですね。サブタイトルで「強い気持ち・強い愛」が入ってますけど、それは物語に則したもので、「強い気持ち・強い愛」が内容を象徴していると思ったので。

権八:そうか、それであの曲なんですね。

大根:そうですね。あとはネタバレになっちゃって言えないんですけど、原作とは違う最後に派手なシーンがあって、そこで流れる曲は自分の中では絶対にオザケンの「強い気持ち・強い愛」という信念が、直観的なものがあったんですよね。

権八:へー!

大根:リアリティでいえば、当時のコギャルがオザケン聞いてたかというと、これは微妙です。取材したコギャルたちの中には聞いていた子もいましたけど。ただ、この曲で・・・あ、言えないのか。

一同:(笑)

中村:小室さんは一緒にやられてみてどうでしたか?

大根:小室さんはね、もちろん天才的なアーティストですけど、同時に、ものすごく優れた職人でしたね。僕が脚本を渡して、「まずは小室さんの自由にこの映画に合うものを数曲書いてきてください」と言って、これは最初にあがってきた曲なんです。これで何か掴めた感じがしましたね。あ、この曲が流れる映画なんだと。

中村:最初からこの完成に近いような。

大根:ほぼこれですね。この曲があるから、途中でどれだけハッチャケても、すずちゃんが白目を剥いても大丈夫というか。多少トゥーマッチな芝居をしても、この音楽に戻ってこれるんだったら大丈夫という計算が立ちました。

中村:つくり手としては一発目にこれが来るのは幸せかもしれない。

権八:キャストのいかんともしがたい心情に寄り添うようなシーンで流れますよね。

大根:そうですね。もうちょっと小室さんのエゴが出てくるかなと思ったんですけど、100%以上に近い形で作品に準じたというか、僕のリクエストに全部応えてくれて。

中村:そういう感じがするなぁ。時代性もそうだけど、こういう曲をつくるぞと言って、バッチリピントを合わせて、ずっとつくってきたという感じがしましたね。

大根:劇中でこれだけ自分がつくった曲が流れているから、劇伴という映画音楽においては引き算でいこうという小室さんの非常にプロデューサーらしい部分があったんだと思います。だから控えめな劇伴なんですけど、それがすごく良くて。こういうエンターテインメント作品は賞には向かないタイプの作品なので、僕が監督として評価されよう、作品として賞をもらいたいというのはなくて、たくさんの人に見てもらいたいという気持ちだけなんですけど、小室さんだけは(日本)アカデミー賞の会場に連れていきたいですよね。

次ページ 「カルチャーに捧げた、大根監督の青春時代」へ続く

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