『北の国から』は、ある意味で『モテキ』である
大根:そうですね。小学校の卒業文集に「テレビの仕事したい」と書いてあるんで。
権八:ネットで見たら『北の国から』がきっかけだったんですか(笑)?
大根:なんで半笑いなんですか?
一同:(笑)
権八:ちょっと意外じゃないですか。大根さんの『モテキ』のイメージと。
大根:いやいや、『北の国から』って長い目で見れば、純のモテキの話ですよ。
権八:あぁなるほど。確かにそうですね。
大根:スペシャルになってからは特に。毎回なんでお前がこんなにかわいい子と付き合うんだと。それで既存曲がやたらと流れて。五郎もめちゃくちゃモテてますからね。いしだあゆみ的なあんな美人を嫁にして、富良野のスナックのこごみという子を食っちゃったりして。意外と共通項はあるんですよ。
権八:そうかそうか。
大根:自分の中で『北の国から』はでかいですね。小学校6年のときに放送がはじまったんですけど、それまで見ていたテレビドラマとあからさまに異質というか、手間の掛け方、リアリティの追求の仕方が違うなと子ども心に伝わってきたんですね。『北の国から』は国民的ドラマ、家族の素敵な物語として捉えられていますが、特に初期の連続シリーズはひどい話なんですよ。
中村:そうなんですか(笑)。
大根:そうですよ。『ツイン・ピークス』のような、北海道の片田舎の限られた地域の中の面倒くさい人間関係の話なんですよ。あ、見たことない?
中村:僕は全然ないんです。
大根:連続シリーズだけでも見てほしいです。みんな89の初恋あたりから好きなんだけど、あんなものは俺に言わせれば魂を売った後の残骸。
権八:え!?
大根:セルアウトした後の堕落した姿というか。一番ピュアなのは連続シリーズと、83冬、84夏、そこまでですね。丸太小屋が燃えるまで。そこまでは素晴らしい、倉本聰が神がかってますよ。ぜひ見てください。
中村:見ます。じゃあ、大根さんはもともと映像はやりたかったけど、カルチャーをずっと直で体験するという。
大根:享受していた感じですね。それで貯めたものが、蓄積されたものがいまだに元ネタになって。
中村:作品にそれを感じますね。
権八:マガジンハウス的と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、雑誌カルチャーも浸かってる印象が。自分がそうだったので勝手にシンパシーを覚えるんですけど。
大根:あぁ、そうですね。雑誌カルチャー的なことでいえば、いとうせいこうさんはホットドッグプレス出身でしょ。いとうせいこうさんの好きな言葉で90年代以降における重要な表現はヒップホップだと。ヒップホップは何かと言えば、批評と編集で、だからオリジナルではないと。
今、ヒップホップはいろいろと枝分かれしてますけど、初期のヒップホップはありものの曲をサンプリングして、自分達のメッセージを載せて。僕もいわゆるアーティストタイプではなく、ヒップホップで言えばDJタイプで、いろいろな元ネタをサンプリングしてつくっていくタイプだと思うんですよね。
権八:いとうせいこうさんってホットドッグプレス出身なんですか?
大根:そうですよ。ホットドッグプレスの編集者だったんですよ。それやりながら藤原ヒロシさんなどとラッパーもやっていたという。
権八:そうなんだ。今の若い子達はたぶんフリースタイルダンジョンの審査員長みたいに見えてるかもしれないけど。大根さんは今もそういう連載をされているじゃないですか。ブルータスやポパイで。
大根:そうですね。小遣い稼ぎでね。
権八:特にポパイの連載はすごいですよね。東京タイアップデート(笑)。
大根:毎回女の子とデートするという。それをレポートするという、とんでもない企画ですけどね(笑)。8年ぐらいやってます。
権八:僕は特に初期がすごいなと思ってました。うわ楽しそ〜ずるい〜!みたいな(笑)。たとえばゲーテに出てきた女の子をこっちからスカウトしたりとかやりたい放題で。最近遠ざかっていて久々に見たら、テレビ出てる子と。
大根:そう、女子アナとデートしたりね。
権八:よくあの企画通したなと。
大根:ここ6,7年、ずっと毎月違う女の子とデートするというミッションを重ねてるんですけども。仕事ですよ。よく聞かれます。実際どうなんだと。
権八:実際どうなんだとみんな思いますよね(笑)。
大根:ないですよ、そんな。
権八:でも連絡先の交換ぐらいはしますよね?
大根:そのぐらいはしますし、その後、もう1回、どこかに飯食いに以降かぐらいのことはありますけど、そこから何かいいことがあったなんて、ラジオで言えるわけじゃないじゃないですか。
中村:あら、何か(笑)。
権八:ねぇ〜!って振ったところで出てくるはずないけどね(笑)。