デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーと監査法人のトーマツは3日、企業の不正リスクに関する調査結果を発表した。上場企業3653社を対象とし、303社から回答を得たもの。調査結果によると、不正の「発生」に伴う想定コストは8.26億円とした一方で、不正の「防止」に投じるべきコストは平均0.9億円に留まった。両社では「予防コストが発生時対応コストを下回っており、対応が後手に回っている」(シニアヴァイスプレジデントの後藤孝久氏)と分析している。
調査結果によると、過去3年間に不正事例があった企業は46.5%。発生した不正事例としては横領(66.7%)、会計不正(31.2%)、情報漏えい(23.4%)、品質や産地などのデータ偽装(17.0%)が続いた。また、不正が発覚した場合に想定されるレピュテーションリスクの上位としては、ブランド・信用の毀損(53.5%)、本業の悪化(33.3%)、株価の下落(9.2%)、従業員の離反(2.0%)などとなった。リスク対策に関する情報発信については、8.6%が「十分である」と答えるに留まっており、対外的な発信に課題を持つ企業が多いと見られる。
同日には都内で記者説明会を開催し、調査結果をもとに学識研究者による解説がなされた。リスク対策を取り巻く社内外コミュニケーション体制について、青山学院大学名誉教授の八田進二氏は「日本企業はルールづくりは得意だが、整備ができていたとしても運用はできていない」と指摘。「不正事案が発覚した場合の、経営や業績に影響するリスクに対する認識の甘さも浮き彫りとなり残念。国民の目線はますます厳しくなっており、2020年に向けて不正の多様化は避けられない」と警鐘を鳴らした。
本調査は2006年から実施しており、今回で6回目。全上場企業にアンケート調査票を送付する形で実施した。