レッドブル社員がメディアで語らない、語らなくていいのは理由がある

アスリートとブランドの関係って何なのか?

一般的にはアスリートは活動するための資金と機会が欲しい。企業はブランドの認知をあげて製品や特徴をアピールするためにアスリートの力が欲しい。お互い目的はある種合致している訳だが、それだけでなんとなくコラボして終わってしまうことも多いのではないか? 

一過性のコラボキャンペーンで、露出を稼ぎ、社内外の評価をあげて、ただ翌年にはほとんど話されなくなってしまい、さらにはそのアスリートは別のブランドのアンバサダーになっている、こんなことはよくあることだ。

特にアスリートは練習や競技に集中したいので、その環境をサポートしてくれることを第一に考える。だが、だからと言って、ブランドとの関係をおろそかにすべきではない。ブランドにとっては、アスリートがどれだけコミットしてくれるのかが大事で、企業はそのための努力をどれだけするのかも考えないといけないと思っている。

私の心に残っているアスリートの行動の一つに、ブレイクダンスシーンを牽引するB BOYのTAISUKE(野中泰輔さん)の話がある。彼とは2007年、当時17歳の時に出会ってから早10年以上の仲だ。今やブレイクダンスはユースオリンピックの種目にもなったし、先日スイスで行われたブレイクダンス世界大会(Red Bull BC One )のB-Girl部門では、日本人のAmiさんが初代チャンピオンにもなり、男女共に世界的に活躍している。

しかしながら、当初はブレイクダンスという種目もアスリートも本当にニッチで、イベントにも人があまり入らなかった。レッドブルというブランドと、ブレイクダンスのシーン拡大、そしてアスリートの成長を目指して、一緒に努力してきたメンバーの1人がTAISUKEである。これは、たまたま彼が原宿を歩いていて、その後オフィスに訪問した時の話になる。

「今原宿歩いていたら、街でTAISUKEさんですか?って声をかけられたので、写真を一緒に撮って、その時自分が普段数本常備しているレッドブルを渡してあげたらとても喜んでいたんですよ!」と言われて、「え?それってよくやっていることなの?」と聞いてしまった。するとTAISUKEは「レッドブルのファミリーとして、自分ができることを少しでもやろうと考えているし、好きなものを紹介するのは当たり前ですよ」とさらりと言っていた。

この行動を聞いて、アスリートとの関係づくりや本人のブランドへの愛着って本当に大事だなって思った次第だ。ファンの心理を考えてみると、このストーリーは絶対に誰かに伝えたくなる、いや、私だったらきっと伝えていると思う。これがいわゆる口コミ効果で、さらに伝える側に影響力があればあるほど、この言葉に重みが出てくる。会社の社員が自社製品を伝える影響力と、彼のようなアスリートが伝える影響力には大きな差がある。

次ページ 「レッドブルの社員がメディアで語ろうとしない理由」へ続く

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長田新子(一般社団法人渋谷未来デザイン 事務局次長兼プロジェクトデザイナー)
長田新子(一般社団法人渋谷未来デザイン 事務局次長兼プロジェクトデザイナー)

AT&T、ノキアにて、情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、その後独立。現在は2018年4月に設立された一般社団法人渋谷未来デザインの事務局次長兼プロジェクトデザイナー。

長田新子(一般社団法人渋谷未来デザイン 事務局次長兼プロジェクトデザイナー)

AT&T、ノキアにて、情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、その後独立。現在は2018年4月に設立された一般社団法人渋谷未来デザインの事務局次長兼プロジェクトデザイナー。

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