日本初!映画×テレビ×Twitterがもたらした #ちはやみる 成功の裏側

東宝は、映画「ちはやふる」3部作の完結編となる「ちはやふるー結びー」公開にあたり、日本テレビ及びTwitterとタッグを組み、Twitterのライブ配信機能「Periscope」を活用したプロモーションを行った。

左)Twitter Japan メディア&エンターテイメント業界担当 木和田 奈々子 氏
中)東宝 映像本部 宣伝部 映画宣伝企画室 プロデューサー 森田 道広 氏
右)日本テレビ放送網 映画事業部 プロデューサー 北島直明 氏

2018年3月9日・16日の両日、日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で2016年劇場公開作品「ちはやふる−上の句−」「ちはやふる−下の句−」が放送に。「下の句」放送の翌日から公開される、シリーズ完結編「ちはやふる−結び−」のプロモーションにおいて、同番組と連動した副音声番組の配信をTwitter上で行った。これは日本初の試みとなる。

テレビ放送に先立ち、映画の公式Twitterでも放送と生配信の告知を行い、「#ちはやみる」のハッシュタグをつけて利用者がリツイート(RT)することで、キャストの広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、松岡茉優からの特別メッセージが届くキャンペーンを展開したほか、キャストもそれぞれ自身のアカウントで放送と生配信の実施をツイートした。また、テレビ放送中には、キャストから地上波生放送でTwitter上でのライブ配信の告知がされた。

さらには「金曜ロードSHOW!」ウェブサイトへのバナー設置や、データ放送画面に番組サイトへ誘導する二次元コード(QRコード)の表示と配信の告知を実施。公式のコラボレーションであることを強調した。

Periscopeでは、キャストがテレビ放送を見ながら自由に会話をする様子を配信し、その音声をテレビの副音声でも流すことで、テレビと配信の同時視聴を狙った。配信は、「上の句」でリプレイを含む総視聴者数が103万人を記録。「下の句」のリプレイを含めた総視聴者数は、116万人を超えた。

テレビからの誘導

金曜ロードSHOWホームページTOPからの誘導

俳優たちの“チーム感”を伝えるため 
テレビとTwitterの連携、初の試みが実現

配給元の東宝はシリーズ完結編となる映画「ちはやふる−結び−」で、シリーズ最高の興行収入を目指していた。当時、東宝ではソーシャルメディアを含めたデジタル施策を強化し始めており、そのタイミングでTwitter社からPeriscopeを使ったプロモーションの提案を受けることとなった。

森田 道広 氏

東宝 映像本部 宣伝部 映画宣伝企画室 プロデューサーで、「ちはやふる−結び−」の宣伝を担当した森田道広氏は「以前、『天空の城ラピュタ』がテレビ放送されたときに、作品中に登場する言葉『バルス』がTwitterで大量にツイートされ、社会現象のようになった。この作品でも、そうしたことをできないかと思っていました。視聴者がキャストと同じ目線、距離感で楽しむような環境を、テレビとTwitterが組めばできるのではないかと考えました」と話す。

「天空の城ラピュタ」のように、テレビを見ながらツイートすることで盛り上がりを共有することは既に一つの文化として根付いている。この盛り上がりを意図的に作りあげるために、Twitter上で番組のタイミングに合わせて施策を行うことが一般化してきた。本施策の新しいポイントとしてはTwitter生配信番組を起点に本企画が組み上げられたことと、同生配信がスマートフォン視聴のみならずテレビからも音声が流れるというデバイスを跨いだ試みであったことである。

木和田 奈々子 氏

今回映画「ちはやふる」に対する提案の発案者である、Twitter Japan メディア&エンターテイメント業界担当の木和田奈々子氏は「以前から構想していたTwitterとテレビの連動企画の提案先を検討した際、主要キャストのTwitter上における影響力と、キャスト同士の仲の良さを鑑み、映画『ちはやふる』が最も適していると考えました。

広瀬すずさんは、360万人を超えるフォロワーを抱えていますし、野村さんや新田さんも活発にTwitterを使ってくださっています。そのキャスト達が『現場が楽しい、いいものができたから見て欲しい』と率直に発信すれば、Twitter利用者にも違和感なく映画の情報を受け入れてもらえると考えました」と話す。

さらに「前の2作は2016年の公開だったにもかかわらず、戦略的に地上波で放送していませんでした。最終作の公開直前に地上波初放送があり、キャストも揃えることができて、Twitterとの新しい取り組みの提案を受けた。タイミングとしても条件が整っていました」(森田氏)と環境も後押しした。

こうして、東宝とTwitterから番組とのコラボレーションは放送局である日本テレビに持ち込まれた。森田氏は「テレビ局とTwitterにはどこか利益が相反する面があると思っていたので、受け入れられるか不安はありました」と話すが、「ちはやふる」3部作を企画した日本テレビのプロデューサー北島直明氏をはじめ、日本テレビはこれを快諾した。

さらには、Twitter内の番組制作や演出なども日本テレビが主導した。「今回の企画では、視聴者のリアルタイムでのテレビ視聴を促進するテレビとTwitterを掛け合わせた施策が実現できた。誰にとっても初めてのことなので、物事が進まないと問題点もわからない。問題点があれば、それはクリアする努力ができる。ただ、実施するにあたってコンセプトは必要だと思いました。新しいという理由だけではダメ」(北島氏)。

北島氏は、「結び」公開へ向けたプロモーションについて、前の2作と同じことをするのではなく、本作独自の色が必要だと考えていた。「『ちはやふる』では、常に新しいことへの取り組みを求めていた。これからの映画界を背負っていく俳優たちが成長する、ある種のドキュメントとして本作を考えていたので、その俳優たちのチーム感を最大限に伝えられるようなものを望んでいました」(北島氏)。

これを受けて東宝は「完結という言葉を『ちはやふる』独自のものと解釈したときに、『卒業』はひとつのキーワードになると考えました。キャストたちにも、作品は学校のようなもので、今作でそれを卒業する、そういう気持ちで情報発信してほしいと伝えていました」(森田氏)。

次ページ 「「自分ごと」と感じてもらうため、
必要なコンセプトとそれを体現するこだわり」へ続く

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