「上司」や「部下」という枠を外し「人」としてつきあう
ピョートル:私は飲み屋で誰かが上司への不満を話しているのをよく耳にします。「うちの上司は何を言っているのかさっぱりわからない。昨日と今日とでは言っていることがまるで違う」と、いかに上司がひどいかを話している。
だけどその上司だって自分の上司からいろいろ言われているわけです。そして部下としっかり話をしないまま動いている。その結果、お互いに不満がたまっていくのです。もっとお互いに建設的な関係を築けばいいのにね。結局、愚痴をこぼす人は、相手を人として見ずに、「上司」とか「部下」という枠にはめて見ているのです。それはとてももったいないことです。
後藤:僕らの著書の一番コアにあるのも「不確実」で、「やってみないとわからない。やってみた結果で勝利条件を更新しよう」というメッセージになっています。今日、お話を聞いて、勝利条件の更新は信頼関係があって初めてできることなのだなと思いました。
前田:経営者の言うことがいきなり変わると納得できないけれど、コアとなるミッションやビジョンを社内で共有できていて、そこに向かった変更であれば大丈夫だということですね。
後藤:根っこのあるなしが、「ああそうか」と納得するか、「わけがわからん!」と不満に思うか、道を分ける。僕と前田さんも大げんかをしながらこの本を書きました。
ピョートル:それは素敵なことですね!
僕は会社の常識を破りたい。部下と上司という枠で考えると、部下は上司にかわいがられなければいけないから、短期的なパフォーマンスを出しておかなければいけない。だけど相手を「人」として見るなら長期的な視点になる。
会話だって、「人」として見ていたら、「お前ら、何をやっているんだ!」とはならない。「こうした方がいいんじゃない?」とか、「それ、やめた方がいいんじゃない?」という会話になるはずです。
そういう会社だったら、「働かなければいけない」とか「楽しい時間は会社が終わった後と週末だけ」ということにはならないでしょう?仕事は大変で面倒くさいこともあるけど、今日も同僚たちに会えて楽しかった。仕事をして汗をいっぱいかいたけど充実して気持ちがよかった。そういう気持ちで働ける会社を僕は作りたいんです。
後藤:弱音を吐くこともできて、高い目標を達成することもできる。そういう環境が一番いいということですね。
前田:だけど日本人の男性には、マッチョでなければいけないとか、弱音なんか吐くものではないという価値観を持っている人が多いんですよね。
ピョートル:「自分はこういう人だから」というバイアスは自分への偏見です。それをなくせば、ロケットみたいに上がっていくことができる。バイアスをいかに外すかということはとても大事です。
前田:バイアスを外すことと心理的安全性はセットになっていますよね。バイアスは「役職」かもしれないし、性格的なものや業務に対するものかもしれない。それを外せる心理的安全性があれば、きっといいプロジェクトチームになるということですね。
ピョートル:そうです。そして、どこまで結果を出すのか、自分が本当にそこまで到達する気持ちがあるのか、自分で責任を持ち覚悟を決めなければいけません。そして、自分自身と、自分の周りの人たちに結果を出すことを約束する。そうしなければ結果なんて出ないと思います。
前田:今日は長い時間、ありがとうございました。最後に一緒に写真を撮りませんか。
ピョートル:いいですね!写真もパターンを破りましょう。セルフィーで撮ってみませんか。
前田・後藤:面白い!
書籍案内
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』
ルーティンではない、すなわち「予定通り進まない」すべての仕事は、プロジェクトであると言うことができます。本書では、それを「管理」するのではなく「編集」するスキルを身につけることによって、成功に導く方法を解き明かします。
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もっとも大切なのは、「心理的安全性」。
安心して本音を言い合えるチームから、最高の成果が生まれる。
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 対談バックナンバー
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