一次審査以降の作品がすべて掲載されているSKATをテキストに、数々の広告賞の受賞歴がある黒澤晃氏が登壇。聴講生にコピーづくりの最後のアドバイスを行った。
トップ作品の差は、0.01秒程度。
宣伝会議賞の一番の特殊性。それはコピーだけを審査対象にしていることです。ふつう広告賞ではコピーとビジュアル、戦略のすべてが評価の対象になる。けれども、宣伝会議賞ではそうした掛け算効果が期待できません。だから三次審査まで通過した作品を見ると、100メートル走でいえば0.01秒程度の差しかない。とはいえ、一次、二次、三次審査の通過作品にはそれぞれ、わずかながら差が存在していることも確かなんです。
コピーの切り口は、家づくりの土地と同じ。
なぜあのコピーが選ばれたのか?を考える際、バックキャスティングの考え方が大事になります。ビジネスの現場では、その典型であるPDCAを回す、という考え方が今も生きていますね。それではバックキャスティング的な思考法で「キャノンマーケティングジャパン」の課題から見ていくことにしましょう。
お題は「Kiss Eos X9でわが子を撮りたくなるアイデアを募集」。身近なカメラがコピー対象商品でした。まず、BtoC企業であるクライアントは、一次審査の通過本数がきわめて多いという特徴があります。CM、ラジオをふくめると319本もありました。なぜそうなるのかといえば、それはCゆえに生活実感があって書きやすい題材だからです。
それではコピーの「切り口」から見ていきたいと思います。コピーにおける切り口とは、家をたてる時の土地のようなもの。クリエイティブのアウトプットであるコピーやビジュアル、デザインなどが建物にあたります。丘に建てるか、街なかに建てるか、川沿いに建てるか、で建物のつくりは違ってきますね。どこに建てるかはとても大事で、それがユニークならアウトプットもユニークになります。
切り口で多かったのが、、「スマホより一眼レフのほうがいい」でした。これは、ふだんはスマホでの撮影がメインで、一眼レフは操作が難しそうだと感じているパパやママがターゲットになります。
この切り口をより細分化したものが「スマホだと着信のときに困る」というもの。これは一消費者として見た場合、説得力がありますね。それではこの切り口で書かれた一次通過コピーを紹介しながら、0.01秒の差を考えていきましょう。
「シャッターチャンスは、通知にジャマされやすい。」
「一眼レフに着信はない」
「着信音が、割り込まない。」
などなど、たくさんのコピーがあることに気付きます。