「あのコピーが選ばれたワケ、教えます」

漢字の名詞がコピーを強くする

それでは次に「コピーは名詞で強くなる」というお話をしましょう。3〜4文字の漢字の名詞を入れると、コピーは強い印象を残すことがあります。作品中から、その漢字を選ぶと、

「写真判定」「一等賞」「行方不明」「二足歩行」など。

これは一種のネーミング的な感じです。こういう漢字が入ると非常に印象が強くなる傾向があります。コピーでは3,4文字の漢字を非常によく使うので、これはちょっと覚えておいてください。

ぼくが1番リスペクトしているこの手のコピーの代表格は、「無印良品」。1970年代に日暮真三さんという名コピーライターによって書かれたものですが、あれから40年経ってもいまだに多くの顧客に愛され続けています。

それから、数字もうまく使うと強い。「ゴールを切った瞬間」と言うよりも、「一等賞の瞬間」といった方が伝わるスピードが早い。SKATを見ると数字の使い方がうまいコピーが上位にいる印象があります。数字は価値や真実をわかりやすく証明してくれるものだから、納得度が高いんですね。

「逆さま発想」の絶大な効果

最後に、わたしがこのSKATの中から1番好きなコピーを選べと言われたら、この「Yahoo! JAPAN」の作品になります。

「AIから仕事を奪ってください。」(シルバー賞受賞作品)

一昨年、宣伝会議からコピーの入門者向けの本を書いてください、という依頼をうけました。その中で「逆さま発想」というものを紹介したのですが、これは今ある価値基準を裏返すことで新しい価値基準を導き出す手法。これがハマると効果絶大なんです。

上のコピーでいえば、常識的な考え方が「AIが人間から仕事を奪う」なんですね。そこを逆さまにしたのがこのコピーです。Yahoo! JAPANはITの先端企業。今よりもっと進んだコンピューティングにより、人間に新しい幸せや喜びを与えたい、というコピーですね。これはすっと頭に入ってくる力を感じました。

伸びるのは、方法論を見つけたひと。

SKATに載っているのは、プロの審査を通過した優秀な作品たち。それらを漠然と眺めるのではなく、それらがなぜいいのかを考えることが上達への近道になります。

いいコピーというのは、それを書く手前の部分がものすごく重要です。プロの場合、企業を任されたらそこを徹底的に調べます。数を書くのももちろん大事だけれども、むやみに書いても上達はしません。調べ上げた上で自分なりの方法論を見つけた人こそが伸びるんです。

宣伝会議賞への応募は、そうした方法論を見つけるのに大事なステップとなるはずです。だから「傑作を10本つくろう」なんて力まなくていい。それよりは自分なりの方法論で自分なりに納得できるレベルのものを一本つくる。まずはそこを目標に取り組んでみてほしいと思います。

黒澤 晃

横浜生まれ。東京大学卒業。1978年、広告会社・博報堂に入社。
コピーライター、コピーディレクターを経て、クリエイティブディレクターになり、数々のブランディング広告を実施。日経広告賞など、受賞多数。
2003年から、クリエイティブマネージメントを手がけ、博報堂クリエイターの採用・発掘・育成を行う。
2013年退社。黒澤事務所を設立。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。

 

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