未来のブランド価値創造を阻害する、行きすぎた「効率経営」とは

必要なのは、予測不可能な未来を切り開く、「創造的な問いかけ」と「進化への尽きぬ挑戦心」

ドラッカー的なスタンスに立てば、「企業やブランドが存続していくこと」「そのために顧客を創造すること」が、企業が目指すべき命題です。そのためには自分の足元と同時に、未来の行き先を見据えた正しい行動をとる必要があります。「どうしても手に入れたい」と新しい世代から選ばれ続けるための、ブランドが実践すべき「問い」と「挑戦」の姿勢です。

ところが、現在もいまだ効率重視が叫ばれ、経営層や事業責任者は自分が担当する間に、単年度ごとの業績を上げることを優先せざるを得ないというのが現状だと思います。

効率的なマーケティングでは、従来の顧客に対する頻度向上戦略・維持戦略が重視されますが、この戦略では今日・明日の売上をつくることはできても、未来の顧客は生まれることはないでしょう。新規顧客からの売上獲得には、従来顧客比で5〜10倍のコストがかかると言われます。また、すぐに売上をつくれるわけではないので、優先順位が落とされがちですが、ここに罠があります。新規顧客を獲得したのち優良顧客になってもらうには相当な時間とコストがかかるので、ブランドの成長が鈍化したときに舵を切っても手遅れになってしまう可能性があるんです。

今、求められているのは、新しい世代に向け、新たな欲望を生み出すブランドの価値づくりに挑戦することです。とくにメインユーザーの平均年齢が高齢化しているブランドでは頻度や維持戦略だけでなく、新たな顧客獲得戦略を強化する必要があります。

そのためには、

「新しい世代を動かす価値とは何か?」の問い


「ブランドの新しい価値創造」への挑戦

を、すぐにでも始めるべきです。

そして、個人的に感じているのは、人の心を動かす新しい価値創造には「感性」や「直感」に基づいたアート的な思考を鍛えなければならないということです。

従来のルールや固定観念に縛られない創造的なシナリオやクリエイティブを構築するには、数値的なデータに基づいたサイエンスの側面からだけでは導き出せないように思います。さらに、挑戦の先の成功は、論理的・確率的に約束できるものではありません。「確実なリターンが見込めないなら挑戦しない」という姿勢では、不確実・非連続な時代を生き抜くことは難しい。だからこそ、未来を問い続ける力を鍛えることも必要になります。

「新たな世代を動かすためのブランドの価値創造」−−この問いと挑戦を続けることが未来の事業創造につながっていくのです。

藤井一成氏(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター))

1968年広島市生まれ。1992年早稲田大学政経学部卒業後、電通国際情報サービスに入社。1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを数多く手掛ける。その後、グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き、「至福の時間をつくる」クリエイティブブティック「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。消費者の“いま”の視点に立ち、ブランドが持つ価値を再編集することで新たなエンゲージメントを築き、ブランドと消費者、社会を次のステージへとポジティブに動かす。「正しいことを楽しく実践して、すべてのステークホルダーを幸せにしたい」という信念のもと、戦略、クリエイティブ、体験デザイン、PR、デジタルなど、360°の視野で構想から実践までを行う。

 

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藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

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