会見中に用意する努力も必要
企業として当然答えるべき質問を受けたものの、話し手が回答を持っていなかったり、ど忘れしたりした場合はどうすればよいでしょうか。求められている回答の内容が事実の公表やデータの提供なのか、コメントなのかで、取るべき対応が変わってきます。
事実やデータの場合は、ひとまず「手元にない」「正確な数字を覚えていない」と正直に話すほかありません。ここからが広報の腕の見せ所。すぐに回答を手に入れ、記者会見が終わるまでに、紙に書いた回答を話し手に手渡すのです。話し手が「さきほどは失礼しました」と切り出して読み上げれば一件落着です。
回答の手配が間に合わず、会見が終わってから補足回答をすることになった場合は注意が必要です。映像がないため、「正確な数字を覚えていない」などの会見中の面目ない映像部分が意図的に使われるかもしれません。
最も困るのは、判断や評価を伴うコメントが求められる場合です。とある企業の異物混入事件の記者会見の例を紹介しましょう。
記者:異物混入の疑いでネット炎上した時、なぜ一時生産ラインを止めて検査しなかったのですか?
回答者:これほどの大事になるとは思わなかったからです
記者:なぜ大事にならないと思ったのですか?
回答者:……
回答者は黙り込んでしまいました。このように、記者の質問に対して回答者が答えに窮するような場面がテレビで放送されると、視聴者はその企業が無能・無責任であるような印象を受けてしまいます。
事例のケースの問題点は、回答者が「これほどの大事になるとは思わなかった」と答えてしまったことにあります。特に異物混入のような不祥事会見では、自分の気持ちを正直に伝えるだけでは通用しません。