最初に劇場に来たのは、年配層だった
まず最初の驚き。市橋さんから、最初に2館で公開された時のことを聞いたのですね。ミニシアター2館で公開したら、いきなり連日満員になった。「やっぱり口コミが届いた若い層が続々やって来たわけですね?」と聞いたら、「実は最初に来たのは年配層だったんですよ」と言うではないですか。「え?どうして年配層が?」「新聞の映画評を読んでくれたみたいなんです」。
『カメ止め』はウーディネ・ファーイースト映画祭で観客賞の2位をとるなど映画通の間では評判になり、5月に試写会をやったらマスコミがけっこう来てくれたそうです。公開が近づくと、それぞれ映画評で書いてくれた。朝日読売毎日日経、全国紙の映画評に全部載った。面白かったんでしょうね。それを読んだ年配の映画ファンが来てくれたのだろう、と市橋さんは言います。
「最初の週の昼間の回を年配のお客さんが埋めて連日満員になった。興味を持って観に来てくれた若い層が入れない。それで翌週からは若い層がわーっと来てくれました。年配層が最初に来なかったら翌週も埋まったかわからないと思っています」。
『カメ止め』は昨年11月に「イベント公開」と称して小規模な上映をしています。それを観た映画通の間で評判になっていた。今年6月の2館での正式公開までの間に、その評判が膨らんで期待が高まったので、連日満員になったのだろうと思い込んでいました。その際にTwitterで盛り上がったんだろうと勝手に考えていた。盛り上がりはしたのですが、大勢の若者たちが公開と同時におしかけるほどではなかった。というか、Twitterだけで動くひとはそう多くはないのでしょう。
それよりも、新聞の映画評を読んだ年配映画ファンが動いたんです。そういえば、新宿武蔵野館なんかに行くと、昼間の回でもけっこう年配のお客さんがいます。若い頃からずーっと映画を観ていたような、現役時代は代理店やマスコミの社員だったかもしれないような方々がたくさん来ているんです。彼らにとっては新聞の映画評が重要な情報源なのでしょう。Twitterで盛り上がってるなんて知らないよ、と言われそう。実際にお客さんを動かしたのはTwitterの前に新聞だった。何か大きな学びがそこにはある気がします。