タレントは旬な人ではなく少し前に人気があった人を活用する
ローマニアック氏は、欧米のマーケティング書では珍しく、DBAの要素としてタレントやセレブリティの起用についても分析しています。彼女の意見で面白いのは、DBAの分析と同じで、一般的に知名度が高いタレントを広告主は好むが、人気のあるタレントほど独自性を構築するのが難しいと指摘している点です。独自性を築くには独自のキャラクターを作るほうがよいのですが、それには知名度を確立するまでに時間と投資が必要です。
タレントのような、よく知られた顔は、そうでないモデルなどに比べて、アテンション効果としての親しみやすさ(知名度)があるので、彼女が推奨しているのは「少し前に人気だったタレントを活用すること」です。今ホットな人物を使うと競合とイメージの独自性を奪い合うことになり、しかも値段が高騰するので、旬ではないが、多くの人が記憶しているタレントのほうが、コストパフォーマンスが高いだろう、ということです。
ローマニアック氏は、再度人気が上昇するブランドというのはたいてい過去に知名度が高かったDBAの要素を再発見してそれを時代やトレンドにあわせて最適化することが常套手段と述べているので(これは日清食品が「チキンラーメン」のひよこちゃんなどで実践しています)、このような方法は理にかなっているということです。
いま話題になっているハズキルーペのCMは多くの有名タレント起用をしていますが、同様の旬な若手タレントを多数活用しているソフトバンクのCMよりも、ある意味で上記のような考えが適用できるように思います。キャスティングはもちろん有名タレントですが、決して今風の人選とは言い難いからです。一般論で言えばハズキルーペのような新しいブランドは過去に依拠するDBAはないので比較的、他社のイメージのついていない新しいタレントを使いがちです。すでに他社で出たことのある有名タレントを使うことは過去の競合のイメージを想起するリスクがあるからです。
しかしターゲットの属性(中高年男性)も考慮し、すでに知名度が確立しているタレントを起用し、自社の独自のブランドアセットと結びつけることに成功しています。実際に菊川怜さんがお尻で踏むアクションは、ハズキルーペのブランドのアセットの一部になっていることは、ソフトバンクのCMでパロディとして起用されていることからも伺えます。