ブランドにとって重要なのは、何を変えて、何を変えないか
ローマニアック氏の主張は、新しく就任したブランドマネージャーやマーケティングマネージャーは特に「イノベーション」と称して、停滞する売り上げに刺激を与えようと、前任者の方針を何から何まで変えたがる傾向にある。そして、その行動により一貫して継続的に作用してきたDBAに影響を与えているという課題が起点になっています。そういった意味でブランドマネジメントにとって大事な決断のひとつは、ブランドの何を変えて、何を変えないかにあると言えるでしょう。
たとえば、アップルのロゴも過去を振り返ると変遷していますが、リンゴの形状そのものは残し、面白いのはかつて色がついていたロゴの色を無色化している、つまり他のDBAの要素を少なくしている点です。この無色化は、アップルの製品のカラーバリエーションに左右されないメリットを与えているほか、白というアップル製品に特長的なDBAを際立たせる効果もあります。白はパッケージでもあり、ヘッドホンや周辺機器の色であって、コアの製品の色ではないのですが、そのうえでコア製品の額縁や背景として目立たせる作用があるからです。
そしてDBAが大事な点は、アップルには独自の広告のスタイル(シンプルな背景で製品のみのグラフィック)や広告コピーの声(そう、アップルならね)にも独自性があるので、競合にとっては似たようなクリエイティブ表現をしただけでアップルを想起させてしまうという効果を持ちます。ローマニアック氏も比較広告やパロディというのは競合を想起させるので避けるべきだと主張しています。
したがってブランドが強力なDBAを持つということは、製品のベネフィットの追随と違って、他社が模倣しても自社のブランドの想起することになり、優位性がゆるがないという大きな価値があります。製品そのものよりブランドの独自性を構築することがどれだけ継続的な意味があるかが、おわかりいただけるでしょう。
しかし当然ながらこのような資産はきちんと活用しない限り人々の記憶から失われます。このようなDBAについて意識的に管理していくことが、今後変化するメディア環境に対して必要なブランドマネジメントなのです。