日本電気(NEC、東京都・港)とチョコレート専門店のダンデライオン・チョコレート・ジャパン(東京都・台東)は、時代のムードを味わえるチョコレート「あの頃は CHOCOLATE」を開発。11月1日には、東京・蔵前にある直営の店舗でメディア向けの先行試食会を実施した。
チョコレートの味は「1969 人類初の月面着陸味」「1987 魅惑のバブル絶頂味」など全部で5種類。価格は単品が1枚1620円、5種アソートボックスが3240円(税込)となっている。10月25日からダンデライオン・チョコレートのオンラインストアで予約を開始しており、12月21日から2019年2月14日の間に順次商品を受け渡す。
「チョコレートを味わうことによってあらゆる世代の方がその時代を思い出したり、想像したりすることができる体験を提供したかった」と語るのは、NECでAIエバンジェリストを務める茂木崇氏。本商品の開発にはNECのAI技術が活用されている。
まずNECのデータサイエンティストが約60年分の日本経済新聞の記事から代表的な頻出単語(約600語)を抽出。「新しい」「若い」といった単語にはフルーティ、「不安」「低迷」などの単語に対しては苦味といった味覚情報を与えた学習データを作成した。その学習データをもとに60年分の記事に記載された13万8000語近くの単語の味をAIが推定し、5つの年のムードから「味」を決めている。
「味覚」と掛け合わせてAIを身近に
チョコレートの制作に携わったダンデライオン・チョコレート・ジャパンでは、通常、カカオ豆の産地や特徴から味を決定するという流れで商品開発を行っている。今回は決められた味から逆算して適したカカオ豆を選ぶという従来とは異なる工程とした。
同社のチョコレートプロダクションマネージャーである伴野智映子氏は「普段と違う方法でチョコレートをつくるのには苦労したが、おかげで思いもよらない味や新しいアイデアも生まれた。AIは人間の仕事を奪うのではないかと恐れられているが、クリエイティブな仕事においては発想の手助けになる」と話した。
NECは2017年にも名作文学の読後感を再現したコーヒー「飲める文庫」を開発している。「AI×味覚」の可能性について茂木氏は「日本人は『苦い経験』『甘酸っぱい思い出』など、感情を味覚に例えて表現することが多い。AIと人間の感覚を組み合わせることよって、AIを身近な存在に感じてもらえるようになれば」と話す。今後は視覚や聴覚などと掛け合わせた商品の開発も視野に入れている。