コミュニケーションはコストではなく、インベスト(投資)。
前田:それにしても目標を与えるというのは、与える方もラクだし、実は与えられる方もラクです。でも、指標をともにつくっていくというのはなかなか大変な作業で、この作業を行っていく上でのポイントはあるでしょうか?
長尾:先ほどのゴールデンサークルの話に戻すと、Whyは「なぜやるか」という理念・目的。Whatは「何をするか」という中身・内容。Howは「どうやってやるか」という手段・方法ですね。このWhyを共有することが大事です。「なぜ私たちはこのプロジェクトを行うのか。なぜその作業を行うのか」ということと、何でプロジェクトを評価するのかという指標を共有すれば、WhatやHowは個人の裁量に任せられるんです。
前田:理念が共有できていれば、細かいところは個人でやってよいと。ただ、この細かいところは個人の裁量でOKよ、となると不安がるメンバーが出てしまわないでしょうか?
長尾:そのために「対話」をします。対話は会議や議論とは違い、チャットのようなテキストベースのみの言語コミュニケーションだけでは十分ではありません。私たちはメールやチャットのようなテキストベースの言語コミュニケーションだけではなく、表情や口調、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションで様々なことを判断していることが多いです。例えば、仲間の様子なんかもそうした非言語コミュニケーションで観察しないとわからないことが多いですよね。
前田:沈黙は雄弁とはいうものの、チャットで沈黙しているのは、熟慮なのか不満なのかわからないですし。
長尾:既読スルーとかもね(笑)
前田:最近では、「電話も対面もめんどくさい。メールやチャットなどで済ませて」という声や、「会議やミーティングはできるだけ減らしたい」という声を多く聞くようになりましたが・・・・・・
長尾:よくコミュニケーションコストという言い方をしますが、コミュニケーションはコストじゃなく、インベストなんですよ。チームを創っていくため、共創を促すために沢山おしゃべりをすること、つまり組織の内外で非言語も含めた流通する情報の量を増やすことが大事です。最近はビデオチャットのツールも進化してきました。テクノロジーの力を借りて、非言語コミュニケーションも含めて「流通する情報量」を増やす取り組みがポイントになると思います。
前田:長尾さんの書籍でも紹介されていた、「コミュニケーションの量が増えれば、誤解されるリスクは減り、逆に理解してもらえるというメリットは増える」というやつですね。
これからは、コミュニケーションをインベストと捉えて、プロジェクトメンバーとコミュニケーションを取りたいと思います。本日はありがとうございました。
長尾:ありがとうございました!
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