「さけるグミ」がグランプリを受賞した経緯
澤本:ラジオCMは面白いですよ。ラジオCMのほうがある種の制限がないし、お金がかからないじゃないですか。僕もラジオCMをよくやってたんですけど、会話のシチュエーション、たとえば学校の教室での会話で書いていて面白くないと思ったら、海や宇宙の効果音をつけると、いきなりその会話のシチュエーションが変わって面白くなったりするんです。人の想像力の中で勝手に遊べるからラジオCMは勉強になるし、面白いですよ。
ひとり:なるほど。
澤本:という中で、強引なんですけど、この番組では出ていただいた方に20秒の時間を自分のCMとして使っていただきたいという、20秒自己紹介のコーナーがあります。佐久間さんには前回やっていただいたので、今日はひとりさんにぜひやっていただければと思います。ご自由に何に使ってもいいので。
ひとり:わかりました。
澤本:よろしくお願いします。では、どうぞ。
ひとり:どうも、劇団ひとりです。お笑い芸人をやってます。芸歴26年ぐらいかな。好きな言葉は「時間厳守」。1分たりとも収録に遅れてきたりはしないです。しかも酒を飲んで遅れたとかは本当に許せないですね、僕は。
佐久間:いやいや、だから・・・(笑)。
ひとり:本当に許せないんですよ。僕はやっぱりプロですからね。遅刻する奴って、みんなの時間を奪ってるんです。だってたとえばね、10分ぐらいいいやと思うかもしれないけど、そこの現場に5人いたら50分奪ったということですから。人にとって時間って財産ですからね。命を削っているものですから。
佐久間:いやいやわかるわかる。
ひとり:その人生を奪うって俺考えられないっすよ。そんな奴は仕事したくないっすよ!
佐久間:いやいやだから・・・(笑)。確かに僕は今日13分遅刻したんですけど。
ひとり:あ、いたいた。時間泥棒(笑)。
佐久間:だけど僕は19時からのゴールデン特番を担当してるんですね。それが金曜日に撮って、土日月で仕上げないといけないスケジュールだったの。それが先に決まっていて、そのミックスが朝の8時から11時半で終わるというスケジュールを組んでいるときにこの番組のオファーをいただいたの。僕は1回出たし、ACCもやってるし、劇団ひとりも僕がいたほうがいいんじゃないかという話になって。そこは厳しいスケジュールかもしれないけど、ならば僕行きますと。
ひとり:仕事は受けたんですね。受けてないというんだったらわかりますけど、受けちゃってるから! 受けた時点で成立なんです。どういう状況であろうと。
佐久間:確かに。でも、ミックスが朝思ったよりてこずったの。普通だったらこっちにすぐ来るけど、オンエアが19時に待ってるからどうしても仕上げなくちゃいけなくてメール送ったでしょ。「10分遅れちゃいます」って。
ひとり:でも昨日の夜、飲みに行ったんでしょ?
佐久間:それはまた別の話(笑)。それで俺今日の朝のミックス遅刻してないから。
ひとり:でも飲みに行ったことで能力はちょっと落ちるわけでしょ?飲みに行ってなかったらもっと早くできたでしょ?
佐久間:うーん・・・。
澤本:つまり原因をつくったのは私。
ひとり:そんなことないんです。僕が言いたいのは、なんでそんなに言い訳がましいんだと(笑)。僕が最初に入ってきたとき、遅刻したらまずは「申し訳ない」でいいじゃないですか。「いやいや違うんすよー、朝までやっててー」みたいなことを言い訳がましいなぁって。だから僕は時間厳守と。
佐久間:ちょっと待ってくださいよ。もう何年ぐらいの付き合い(笑)? 17、18年の付き合いでしょ、だって。
ひとり:そうですけど、大人として時間だけは守りましょう。CMは「今回は17秒で」ってわけにはいかないですから。
佐久間:いや、面倒くせーな!
一同:(笑)
澤本:お二人に審査していただいたフィルム部門があるんですけど、審査の模様をちょっとお聞きいただければと思います。
—再び、審査の様子—
澤本:この先はグランプリを決める投票なんですけど、今、候補になっているのは日清、1UP、さけるグミ、東京ガス、やまや。投票の前に簡単な議論だけ、自分はどれが好きか、好き嫌いの話だけをしたいと思います。佐久間さん、お願いします。
佐久間:僕も悩んでいて。単純に笑ったのは、僕もネットで検索して続きを見たいなと調べてみたのは、この中だと「さけるグミ」だけだったので。爆発力はあるなと思います。
ひとり:僕は東京ガスが好きなんですけど、商品というお題から一歩も逃げず、正面からいったのは「さけるグミ」なのかなと。
澤本:では、投票に移ってしまってもよろしいでしょうかね。
(開票)
ということで、「さけるグミ」が過半数なので「さけるグミ」に決まりました。
澤本:こうやって学級委員の投票のようなことやって決めてるんですけど、どうでしたか?
ひとり:今も言ってましたけど、「さけるグミ」は商品をCMの中でふんだんに使っていたから、そこが僕は素晴らしいなと思っていて。お笑いだと、お題が難しいとちょっと脇道に行くんですよね。今回、良いCMがいっぱいあった中、他のCMはちょっとズラしていると思ったけど、「さけるグミ」は全くズラさずにやっていたからすごいなと。
澤本:その視点は素晴らしいと思っていて、商品から発想しているじゃないですか。おっしゃった通り、面白くしようとすると、商品じゃないところでどんどん持ち上げていくけど、「さけるグミ」はずっと商品をいじってましたからね。あれは本当に広告の基本の基本と言うんですかね。王道で。佐久間さんはどうですか?
佐久間:さけるグミは去年も面白かったんですよ。去年も商品と戦っていたけど、今年のほうが何倍も面白くなっていたんですよね。ちょっとわからないのは、さけるグミVSなが~いさけるグミだったじゃないですか。「なが~いさけるグミ」って商品を出すことになってからあのCMをつくったんですよね?
澤本:そうだと思いますけどね。商品を提案したかどうかはわからないんですけど。
佐久間:CMとセットで考えたのかなと一瞬思うぐらい面白かった。
ひとり:なるほどね。このCMをやりたいからつくろうと。
佐久間:そのぐらい、さけるグミVSなが~いさけるグミのコンセプトが面白かったので。
ひとり:「なが~いさけるグミ」と「さけるグミ」。「さけるグミ」を足していったら同じ長さだというところは鳥肌立ちましたね。
佐久間:あれ良いシーンでしたね。
澤本:今おっしゃっていただいたけど、商品があってCMをつくるでもいいですけど、このCMを面白くできるんだったらこういう商品つくりましょうという逆提案があっても良いと思うんですよね。昔、そういうのはなかったですけど、最近では広告を担当している人が会社の経営者と近しくしゃべれるようになっているので、そういうチャンスがあると思うんです。僕らは商品開発まで踏み込んでやったほうがいいし、実際にやっている人もいると思います。
ひとり:そもそもですけど、CMってどうやってつくってるんですか?