ACCフィルム部門の審査の中身を公開!(ゲスト:劇団ひとり、佐久間宣行)【前編】

たけしさんも秋元康さんも「制約」を重視している

澤本:たとえばここに水がありますけど、この水をCMしてくださいという依頼が来て。そのときCMはテレビと決めきれてなくて、予算がこれだけあって、これを広告したいんだけど、テレビCMか、Webだけにするのか、テレビもWebもやらないで、SNSでやるなど、いろいろな手法があります。その中で今回はターゲットがここだから、CMをつくりましょうという提案から入って、あとはCMプランナーが水をお題にして字コンテや絵コンテを書いて、5、6案考えて、どれにしましょうと提出して選んでいただくという流れですね。

ひとり:クライアントは結構いろいろ言ってくるんですか?

澤本:だいたい言うのが仕事ですもんね(笑)。もちろん、ただ水のCMをつくってくれということはなくて、この水はどこどこ産で、硬水か軟水か、こういう機能があるということを全部盛り込もうという話になって。僕ら的には紹介をするにはこういう手段がありますね、それこそ15秒だったらそんなに言ったら誰も覚えてくれないし飛ばされちゃうから、今回のCMは産地だけに特化していきましょうと提案もしたりして。

ひとり:無理難題も言われるんですか?

澤本:すごくいっぱい。

一同:(笑)

ひとり:それやったらダサいじゃんというのもあるんですよね。

澤本:そうですね。でも担当の方はそれをやれと違う部署の偉い方に言われているから言うじゃないですか。僕ら的にはそれを言ったら台無しだよということいっぱいあるんですけど、それについて何回もご説明して受け取っていただくこともあるし、結果、無理無理それが入って台無しだなと思うこともやっぱりありますね。

ひとり:はぁ~、ストレスたまりますね。

澤本:ストレス溜まりますよ。酒量が増えます(笑)。

ひとり:だから昨日も酔いつぶれてたんですね。

澤本:すみません(笑)。僕が会社に入って当時の先輩に言われたのが、CMは芸術と言ってはいけないと思うんですけど、「CMは制約がある芸術だ」と言われていて。15秒、クライアントからの要望、あとタレントが決まってることもあるんですね。

そういう制約をいっぱい詰め込んで、あるフィールドの中での最適解を探すという競争だから、制約があることを前提に楽しまないと、と言われて。今はそれに慣れているので、「何か面白いCMをフリーで考えていいよ」と言われると怖くてできないんですよ。むしろ僕に縛りを与えてと。

ひとり:それ、お笑いもそうですね。ネタをつくるときに何かお題がないと、どうしていいかわからない。「はい5分何かやって」と言われちゃうとアレだから。自分でネタをつくるときでさえ、自分で自分に枷をつくって「このお題」とやらないと、どこから着想を得ていいかわからなくなっちゃうんですね。

澤本:そうですよね。たとえば後輩に教えるときに、考えだすときにきっかけがいるから、たとえばシチュエーションをコンビニにしようと。コンビニで何か考えてと言うと、急に考えられたりするんですよね。クライアントから言われる枷もあるし、自分からこのシチュエーションでやろうと言うとみんな考えられるのもあって。制約は大事だと思います。

ひとり:前に星新一さんのショートショートのつくり方をインタビューで読んだんですけど、三大落語と同じなんですよ。キーワードをいっぱい紙に書いて、後ろに投げて、手探りで3つ拾って、この3つを無理やり話の中に入れて書くんですって。

澤本:えー、すごいですね。

佐久間:秋元康さんも言ってましたよ。要は自分の中からだけで作詞していたら俺はたぶんもう続いていないと。俺は構成作家でもあるから、歌う人が企画と考えて、その人が歌うと考えて作詞するからまだこの歳でも書き続けられていると。それが制約、お題になるということですよね。

ひとり:すごい人達はみんな似たようなことを言っているんですね。ビートたけしさんも同じことを言っていて、僕は昔コンビだったんですけど、番組で一緒になったときに珍しくダメ出しをしてくれて。

佐久間:えっ!?

次ページ 「たけしさんからの貴重なアドバイス」へ続く

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