どんどん増える家庭内のタスクをプロマネツールで管理
前田:平さんは二人の息子さんを抱えた共働きの生活にバックログというプロジェクトマネジメント(以下プロマネ)ツールを持ち込まれています。
我が家も共働きで6歳と2歳の娘がいるので、働きながら子どもを育てる大変さはよくわかります。保活(子どもを保育園に入れるための活動)ひとつとっても、自分の住む地域のどの場所に保育園があるのか見つけるだけで大変だったので、グーグルスプレッドシートに住所情報を入れてクリックすると保育園情報がプロットされるシステムを作る企画を立てて、それを区役所に入れてもらいました。僕はそういう解決の仕方はしてきましたが、プロマネツールを家庭に入れるという発想はまったくなかった。ですからその様子が書いてある平さんのブログを拝見した時はすごい衝撃を受けました。
平:私は長男の出産を機にサーバーエンジニアからクラウドエンジニアに転身したんです。その配属先で使われていたプロマネツールがバックログでした。転身して半年くらいたった時に長男が肺炎で入退院を繰り返すようになり、結局看病に専念するためにその会社は退職しました。
その後、自宅でもできる仕事をやったりしていたのですが、ちょうどそのころ2人目を妊娠したんです。それで、2人目出産後の保活を成功させるために家庭にバックログを導入して、自分がやらなければいけないことを整理するようにしました。家庭内のタスクって山のようにあるんです。子どもの健康管理、保活、家族行事、自分の仕事復帰に向けたスキルアップ等々…、数えきれないほどのタスクがあります。そのうえ、突如家電が壊れるとか、次々といろんなことが降りかかって、タスクはどんどん増えていくわけです。
やることが多すぎるから、忘れるものものが出てくるし、常にひどい寝不足だし、これでは時間が足りないと思って夫にも彼ができることを分担してもらいました。それまで夫には単発で協力要請していたのですが、あらかじめ分担しておいた方が夫自身もやりやすいようです。そうしたいきさつや、日々考えたことを記録したのが、前田さんが見てくださった『家庭にプロジェクト管理ツールを導入してみた』というブログです。
前田:いまだに過去記事がリツイートされているぐらい影響力の大きなブログですよね。バックログを入れて、具体的にどのようなところが良かったですか。
平:タスクをうまく分担できるようになったことはもちろんですが、一番良かったのは「記録に残る」ということです。例えば、クリスマスプレゼント、親戚へのお歳暮、親へのプレゼントなど、何年にどんなものを贈ったのか、予算はどのくらいだったか、いつごろ手配したのか、全部記録されるのはすごく便利です。
前田:記録に残るというのは、家事育児に限らずあらゆる仕事に有効ですよね。私も記録は大好きで、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』も、「プロジェクト譜(プ譜)」という自分で考えた記録ツールが肝になっています。プロジェクトをスタートすると、状況に応じて機能を追加したり、逆に削除したりと、いろいろな変更が起こりますよね。そうしたプロセスをプ譜として記録おけば、他のプロジェクトを立ち上げた時に役に立つと思うのです。
平:私はプロダクトマネージャーの勉強はしていませんが、それでも目標を書いたり、達成目標を数字で表したりしてきました。そういう面でプ譜の考え方はすごく参考になります。とくに、「軌道修正をしてもいい」と書いてあるのを見た時はすごく安心しました。子育てというものは、計画通りに進まないことやつまづくことが多いですからね。柔軟性が求められます。
私はこの4月にジャパンデジタルデザインに再就職して新規事業のスタートアップに携わっていますが、新規事業の立ち上げもいろんなことが起こります。そういう意味で子育てと共通点がとても多いんです。当社の社長は、子育ての経験をプロジェクト管理に役立ててもらおうと、育児経験のある女性エンジニアを積極的に採用する方針を打ち出しました。
前田:それは素晴らしい。