アクティブで質の高い利用者の多さがTwitter活用の決め手
虫歯や歯周病の症状がないにもかかわらず、飲食物を口にした刺激などで痛みを感じる知覚過敏症状は、成人の3人に1人が経験している*1と言われている。しかし、歯科医による治療や日々のケアによる予防など、何らかの対処をしていない人がほとんどだという。
グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパンのオーラルケアブランド「シュミテクト」は、この知覚過敏症状予防のプロフェッショナルブランド。知覚過敏の症状を抱えながら、対処せずに食べたいものを恐れたり、我慢したりしながら生活している人に、より快適な生活、楽しい食生活を送ってもらうことをビジョンに掲げている。プロモーションで目指すのは、新規顧客層へのリーチを獲得し、ブランド認知の向上と知覚過敏症状への対処の必要性を感じてもらうことだ。
「シュミテクト」は過去、テレビCMを中心としたコミュニケーションを行ってきたが近年は、全社的なデジタルマーケティング推進の動きもあり、動画やバナー広告の掲出を実施していた。さらに、コミュニケーション投資の効果を高めるためには、消費者の声が見える形にすることが拡散につながると考え、2017年からはソーシャルメディアのトライアルを開始した。
まずは、グローバルでも影響力が高いFacebookアカウントを開設し、フォロワーや「いいね!」も一定数、獲得できていた。その一方で、情報のシェアやフォロワーからの発信に課題を感じていた。
同社オーラルヘルス マーケティング ブランドマネージャーの伊藤麻希子氏は、「Facebookは実名アカウントという特性もあるのか、期待よりも反応を感じられませんでした。翌年以降のプランを考えたときにより適切なものは何かということで、能動的な情報発信・会話をする利用者の多さ、利用頻度、拡散力などに着目して、Twitterが最適ではないかという仮説にたどりつきました」と話す。
そこでTwitter JapanのClient Solutions戦略パートナー担当 シニアクライアントパートナー石橋啓次氏による提案もあり、同社として初となるTwitterプロモーションを実施することとなった。
企業特性に合わせた指針やガイドラインで、運用に対するハードルを乗り越える
Twitterの導入について、社内の合意は比較的容易に得られたという。「グローバルとしてはFacebookを活用する方針ですが、日本の市場を見るとTwitterの方が効果的であることはわかっていました。会社としても有効なものを使うことは現地の裁量に任されています」(伊藤氏)。
運用については、グローバル企業としての方針よりも、社会的な責任がある製薬会社であるがゆえに、発信する内容にはより慎重さが求められた。ソーシャルメディアに限らず全てのコミュニケーション、コピー、文言を事前に社内で確認している。これはタイムリーな情報発信および展開に特徴があるTwitterとしてはハードルとなる。しかし、事前に投稿内容をプランし、承認プロセスも含めたスケジューリングをすること、また、承認部署の協力によって、大事なモーメントを逃さない情報発信をできる体制を整えた。
本命キャンペーン前の話題化で効果の最大化。売上も向上
キャンペーンは7月25日の「知覚過敏の日」に話題を最大化させることを目指して検討された。この「知覚過敏の日」は、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパンが日本記念日協会に申請して制定された記念日だ。しかしこれまで積極的に活用されてはいなかった。伊藤氏は「シュミテクトの担当になってからこの日に何かをしたいということはずっと考えていました。Twitterは特定の日時、モーメントをとらえることに有効。この日を盛り上げるための施策に向いていると思いました」と話す。
伊藤氏は当初、「知覚過敏の日」のタイミングに絞ってピンポイントで盛り上げることを考えていたという。キャンペーンの方針を聞いたTwitter Japanから、目的の日をより一層盛り上げるため、フォロワーを確保するために、事前キャンペーン実施の提案を受けた。「私たちはひとつの大きな波をつくる意識しかありませんでした。手前に波をつくることで、続く波をより大きくできるという提案は新鮮でしたし、説得力がありました」(伊藤氏)。
知覚過敏の日に合わせて行った「シュミテクト知覚過敏大喜利キャンペーン」に先立ち、ブランドのひとつ「シュミテクト トゥルーホワイト」の認知を上げるためのキャンペーンを実施。「シュミテクト トゥルーホワイト」は、ブランド内でも高価格帯で、研磨剤無配合なのにホワイトニングできるという商品だが、認知が進まないことに課題を抱えていた。この事前キャンペーンでは認知を獲得しただけではなく売上も前年比103.5%と向上*2、シェア獲得につなげた。
加えて「私たちはこれまでテレビCMによってブランド理解は進んでいると考えていました。しかし、キャンペーンに対するツイートで『シュミテクトにもホワイトニング効果があるなんて知らなかった』というものもあり、消費者にとっては新しい情報だったことに気づきました。新規利用者獲得のためにも、テレビを見ていないなど、従来のコミュニケーションではリーチできていない層が存在することもわかったことは発見でした」(伊藤氏)。
事前キャンペーンの甲斐があり、「知覚過敏の日」当日に実施した「シュミテクト知覚過敏大喜利キャンペーン」には5,000を超える参加があった。アカウントのフォロワーは2万人台に乗り、プロモトレンドも活用することで「知覚過敏の日」で関連ツイートは増加、狙い通りの盛り上がりをつくることにも成功した。キャンペーン期間中のシュミテクトの売上は、非常に好調に推移した。
今回、Twitter Japanは企画のブリーフィングから参加し、アドバイザーのような役割も果たした。伊藤氏はその狙いを「Twitterを使うのは初めてですし、うまく利用するためのテクニックがあるはずと考えました。それはプロに教えてもらうのが一番。実際、私たちのビジネスや、実現したいことを理解した上でアドバイスをしてもらえました。石橋さんをはじめTwitter Japanの皆さんと、一緒に施策を進める広告会社、制作会社と継続的にコミュニケーションを取り、チームとして動けたことが成功につながったのではないかと感じています」。
初めてのTwitterを使ったキャンペーンで成果を上げたこともあり、すでに秋のキャンペーンもスタートしている。今後の方向性について伊藤氏は「今回、フォロー&リツイート、投票型など様々な方法を利用したのはトライ&エラーをしてどの手法がブランドに合うか探したかったからです。今はまだフォロワーを増やすフェーズにあると考えています。来年に向けて、さらにフォロワーを増やすためには新規の消費者にリーチする必要がある。そのためには、シュミテクトはいつも面白い取り組みをしていると感じてもらうことが重要です」と話す。
「知覚過敏の日」という企業の資産を有効活用し、成果につなげた「シュミテクト」。キャンペーンをきっかけに「知覚過敏」という言葉の検索数も増えているという。「私たちのビジョンを達成するためには、ブランドだけではなく知覚過敏カテゴリー全体の認知や意識を高めていくことが大切。ブランドだけではなく、知覚過敏という言葉がどう人々に検索されているかも検証しています。同じようにTwitter上での数値を知ることは世間の関心を計る指標にもなる、フォロワーとツイートを増やすための施策は続けていきたいと考えています」(伊藤氏)。